IBDの症状と経過
典型的な症状:
- 慢性嘔吐: 週1回以上、数週間〜数ヶ月続く
- 慢性下痢: 軟便や水様便が続く
- 体重減少: 食べていても少しずつ痩せる
- 食欲の変化: 低下することが多いが、亢進する場合もある
- 腹部のゴロゴロ音: 腸の動きが亢進
特徴的な経過: 良い時と悪い時を繰り返しながら徐々に進行。「しばらく良かったのにまた吐き始めた」というパターンが典型的です。
重要: IBDと消化器型リンパ腫は症状が非常によく似ています。確定診断には生検が必要です。
診断の流れ
IBDの診断は除外診断(他の疾患を除外していく)が基本です。
ステップ1: 血液検査・尿検査・便検査で他の疾患を除外(寄生虫・腎臓病・甲状腺・膵炎など)
ステップ2: 腹部超音波検査で消化管壁の肥厚やリンパ節の腫大を確認
ステップ3: 内視鏡生検がゴールドスタンダード。全身麻酔下で消化管粘膜のサンプルを採取し、病理検査で確定診断。リンパ腫との鑑別にも必要。
費用は全体で5〜15万円程度が目安です。
治療と長期管理
食事療法(第一選択):
- 新奇タンパク食: 猫が今まで食べたことのないタンパク源(鹿肉・カンガルー等)の療法食
- 加水分解タンパク食: タンパク質を細かく分解した低アレルゲン食
- 6〜8週間の厳格な食事試験で効果を評価
薬物療法:
- プレドニゾロン(ステロイド): 炎症の強い場合。高用量から開始し徐々に減量
- ブデソニド: 局所作用型ステロイド。全身性副作用が少ない
- クロラムブシル: ステロイドで効果不十分な場合の免疫抑制薬
- ビタミンB12補充: 吸収障害で不足しやすいため補充
多くの猫で食事療法+ステロイドの組み合わせにより良好な症状コントロールが達成できます。
IBDの早期発見:見逃しやすい初期サイン
IBDの初期症状は「猫はよく吐くから普通」と見過ごされがちです。以下のパターンに注意してください。
見逃しやすいサイン:
- 月2回以上の嘔吐が数ヶ月続いている
- 便が以前より柔らかくなった(下痢とまではいかない軟便)
- 食べる量は変わらないのに体重が緩やかに減少
- 毛並みが少し悪くなった(栄養吸収不良のサイン)
- お腹がゴロゴロ鳴る頻度が増えた
「正常な嘔吐」と「異常な嘔吐」の境界:
- ヘアボールを月1回程度吐くのは正常
- 食後すぐに未消化のフードを吐くのが週1回以上 → 異常
- 黄色い液体(胆汁)を吐く → 異常
- 嘔吐に伴い体重減少がある → 即受診
早期に診断できれば、食事療法だけで症状がコントロールできるケースも多く、ステロイドの必要量を最小限に抑えられます。
IBDの検査費用の内訳
IBDの確定診断は段階的に行われ、費用は検査の深さによって変わります。
第1段階(基本検査): 10,000〜25,000円
- 血液検査(CBC・生化学): 5,000〜15,000円
- 便検査(寄生虫・病原体の除外): 1,000〜3,000円
- 尿検査: 2,000〜4,000円
- fPLI検査(膵炎の除外): 5,000〜10,000円
第2段階(画像検査): 5,000〜15,000円
- 腹部超音波: 腸壁の肥厚(正常は2.5mm以下)、リンパ節腫大の確認
第3段階(確定診断): 50,000〜150,000円
- 内視鏡検査+生検: 全身麻酔下で実施。確定診断とリンパ腫との鑑別に必須
- 病理検査: 組織サンプルの分析
- 免疫組織化学検査: 追加で10,000〜20,000円
合計: 基本検査のみなら2〜3万円、内視鏡まで含めると10〜20万円程度。
生検なしで「IBD疑い」として治療的診断(食事療法+ステロイドで反応を見る)を行うこともありますが、リンパ腫との鑑別のためには生検が推奨されます。
IBDの猫との暮らし:フレアアップの管理と予防
IBDは完治が難しい疾患ですが、適切な管理で多くの猫が良好な状態を維持できます。
フレアアップ(症状悪化)の引き金:
- フードの変更(たとえ「良い」フードへの変更でも)
- ストレス(来客、引っ越し、工事の騒音など)
- ステロイドの急な減量・中止
- 季節の変わり目
フレアアップ時の対処:
- 獣医師に連絡し、ステロイド量の一時的な増量を相談
- 消化に優しい食事に一時的に戻す
- ビタミンB12の追加投与が必要になることも
日常管理のチェックリスト:
- 食事は厳格に一貫性を保つ(療法食以外は一切与えない)
- 定期検査: 3〜6ヶ月ごとの血液検査と体重測定
- 投薬の遵守: ステロイドは獣医師の指示なく減量・中止しない
- ストレス軽減: 猫のストレスサインを見逃さない
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