猫の足を引きずる
猫が1本以上の足をかばうように歩く症状です。急に始まった場合は外傷、徐々に悪化する場合は関節疾患の可能性があります。
足を引きずるの要点まとめ
- 主な原因
- 外傷(捻挫・骨折)、関節炎、爪のトラブル(巻き爪・怪我)、膿瘍(ケンカの傷) など
- 緊急受診
- 足が変形している・激しい痛み
- 自宅対応
- 安静にさせる(ジャンプを制限する)。足の裏や爪に異常がないか確認する
- 治療費目安
- 原因により大きく異なる。軽度の捻挫:5,000〜15,000円、骨折手術:150,000〜300,000円、OAの月額管理費:5,000〜15,000円(ソレンシア注射含む場合約10,000円/月)、骨肉腫の断脚:200,000〜400,000円
病態生理
跛行は運動器系(骨・関節・筋肉・腱・靭帯・神経)のいずれかに疼痛・機能障害・構造異常が生じた結果、正常な歩行パターンが破綻する症状である。疼痛性跛行では、患肢への荷重時に侵害受容器が活性化され、脊髄後角を経由して痛覚信号が中枢に伝達されることで、反射的に患肢の接地時間を短縮し対側肢への荷重を増加させる代償歩行が出現する。機械的跛行では関節可動域の制限や骨変形、筋萎縮により正常な関節運動ができず歩様異常が生じる。猫は痛みを隠す傾向が極めて強く、跛行が明らかに観察される時点で相当な疼痛や機能障害が存在していることが多い。また心血管系疾患(大動脈血栓塞栓症)による急性後肢麻痺や、神経学的原因による歩行異常も跛行として認識されることがあり、鑑別には全身的な評価が不可欠である。
考えられる原因
- 外傷(捻挫・骨折)
- 関節炎
- 爪のトラブル(巻き爪・怪我)
- 膿瘍(ケンカの傷)
- 骨腫瘍
- 椎間板疾患
鑑別診断
慢性的で徐々に進行する跛行。活動性の低下、高所への跳躍回避、起立時のこわばりが特徴。X線で骨棘形成、関節腔狭小化を認める。6歳以上の猫の約61%に放射線学的所見あり
外傷歴があり急性発症。患肢の非荷重性跛行、腫脹、異常可動性、握雪音(crepitus)。X線で骨連続性の断裂を確認。高所からの転落や交通事故が原因となることが多い
外出する未去勢雄に多い。咬傷後2〜5日で局所の腫脹・疼痛・発熱・跛行が出現。膿瘍が破裂すると排膿を認める。Pasteurella属やFusobacterium属が主な起因菌
跳躍や着地失敗後の急性跛行。関節の腫脹と疼痛はあるが骨折のような異常可動性はない。X線では骨に異常なし。前十字靭帯損傷では脛骨前方引出し試験陽性
間欠的な後肢跛行でスキップ様歩行を示す。触診で膝蓋骨の内方または外方への脱臼と整復を確認。グレード1〜4に分類。猫では内方脱臼が多い。純血種の32.7%に認められるとの報告あり
両側性の後肢跛行、骨盤肢の筋萎縮、階段やジャンプの回避。X線で浅い寛骨臼、大腿骨頭の亜脱臼、二次性変形性関節症を確認。メインクーンでは有病率18〜25%
スコティッシュフォールド特有の遺伝性疾患。TRPV4遺伝子変異による軟骨形成異常。足根関節・手根関節・尾椎の腫大と硬化、短く太い四肢と尻尾。進行性の重度関節症を引き起こす。折れ耳・立ち耳問わず発症
肥大型心筋症に続発。突然の後肢麻痺・激痛・大声で鳴く。後肢の冷感、足底パッドのチアノーゼ、大腿動脈拍動消失の5P徴候。致死率約60%と予後不良
慢性進行性の跛行と患部の硬い腫脹。猫の悪性骨腫瘍の約70%を占める。後肢(特に膝周囲)に好発。犬と比べ転移率は低い(5〜10%)。X線で骨溶解と骨新生の混在像
カリシウイルス感染やワクチン接種後に発症。発熱を伴う急性多発性関節炎。上気道症状を伴うことがある。滑膜の急性炎症と関節液増加。通常は自然軽快する
椎間板の変性・突出による脊髄圧迫。後肢の不全麻痺〜完全麻痺、排尿障害、背部痛。猫では犬に比べはるかにまれ。MRIで確定診断。高齢猫に多い
単関節の急性腫脹・激痛・発熱。関節穿刺で混濁した関節液、好中球増多、細菌培養陽性。猫では犬より発生頻度が低い。咬傷や外傷からの二次感染が多い
Toxoplasma gondiiの活動性感染による全身性筋炎・多発性関節炎。発熱、元気消失、食欲不振を伴う。免疫抑制状態の猫で発症しやすい。血清抗体価・PCR検査で診断
緊急度の目安
| 状況 | 緊急度 |
|---|---|
| 軽くかばっているが歩ける | 早めに受診 |
| 足をつけない | 早めに受診 |
| 足が変形している・激しい痛み | 緊急受診 |
診断の進め方
視診で歩様を観察し、患肢の特定と跛行の程度を評価。触診で骨・関節・軟部組織の腫脹、疼痛、不安定性、握雪音、関節可動域を確認。四肢の比較触診と神経学的検査を含む
骨折、脱臼、関節変性、骨腫瘍、骨棘形成などの骨・関節異常を評価。2方向以上の撮影が基本。骨軟骨異形成症やOAの画像的評価に不可欠
CBC、血液生化学で全身性疾患(感染症、代謝性疾患、腎臓病)のスクリーニング。FeLV/FIV検査、CRP等の炎症マーカーも必要に応じて実施。トキソプラズマ抗体価検査も含む
関節から滑液を採取し、細胞数・細胞分類・細菌培養・結晶分析を実施。感染性関節炎と免疫介在性関節炎の鑑別に重要。複数関節からの採取が推奨される
X線で原因が特定できない場合や、椎間板ヘルニア・脊髄疾患・軟部組織腫瘍の精査に実施。MRIは軟部組織の評価に優れ、CTは骨の詳細評価に適する。全身麻酔が必要
自宅での対応
- 安静にさせる(ジャンプを制限する)
- 足の裏や爪に異常がないか確認する
- 腫れがないか観察する
治療法
保存的治療(安静・体重管理)
軽度の捻挫や軟部組織損傷に対して安静と活動制限を行う。肥満猫では減量プログラムを併用し関節への負荷を軽減。環境エンリッチメントの調整(段差の低減、クッション性のある床材)も重要
軽度の損傷であれば2〜4週間で改善。OAは進行性だが管理により生活の質を維持可能
薬物療法
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)による疼痛管理が基本。猫ではメロキシカムの長期低用量投与が広く用いられる。抗NGF抗体製剤(フルネベトマブ/ソレンシア)は月1回の注射で慢性疼痛を管理する新しい選択肢。感染性疾患にはそれぞれ適切な抗菌薬や抗原虫薬を使用
原因により異なる。OAでは継続管理で良好な生活の質を維持。感染性関節炎は早期治療で予後良好
外科的治療
骨折のプレート・ピン固定、膝蓋骨脱臼の滑車溝造溝術、股関節形成不全の大腿骨頭切除術(FHO)、骨肉腫の断脚術など。骨折手術ではワイヤー・プレート・髄内ピンによる内固定が標準。大動脈血栓塞栓症には血栓溶解療法を検討
骨折は適切な固定で予後良好。骨肉腫は断脚術で中央生存期間2〜4年。ATEは致死率約60%
リハビリテーション・理学療法
術後や慢性関節疾患に対して、レーザー治療、水中トレッドミル、マッサージ、受動的関節可動域訓練を実施。筋肉量の維持・回復と関節可動域の改善を目指す
リハビリテーションの併用により機能回復が促進。継続的な実施が重要
疫学データ
跛行は猫の来院理由として最も一般的な運動器症状の一つ。変形性関節症は6歳以上の猫の61%、14歳以上の82%にX線所見が認められる。外傷性骨折と咬傷膿瘍が急性跛行の最も一般的な原因
全年齢で発生。外傷性は若齢〜中年、変形性関節症は6歳以上、腫瘍性は8歳以上に多い
メインクーン、スコティッシュフォールド、ペルシャ、アビシニアン、デボンレックス
原因により大きく異なる。軽度の捻挫:5,000〜15,000円、骨折手術:150,000〜300,000円、OAの月額管理費:5,000〜15,000円(ソレンシア注射含む場合約10,000円/月)、骨肉腫の断脚:200,000〜400,000円
関連する症状
足を引きずるに関するよくある質問
Q. 猫が足を引きずるを見せる原因は何ですか?
猫の足を引きずるの主な原因には、外傷(捻挫・骨折)、関節炎、爪のトラブル(巻き爪・怪我)、膿瘍(ケンカの傷)、骨腫瘍、椎間板疾患があります。
Q. 猫の足を引きずるはいつ病院に行くべきですか?
緊急足が変形している・激しい痛み
早めに軽くかばっているが歩ける
早めに足をつけない
Q. 猫の足を引きずるの自宅での対処法は?
- 安静にさせる(ジャンプを制限する)
- 足の裏や爪に異常がないか確認する
- 腫れがないか観察する
Q. 猫の足を引きずるの治療費はどのくらいですか?
猫の足を引きずるに関連する治療費の目安は原因により大きく異なる。軽度の捻挫:5,000〜15,000円、骨折手術:150,000〜300,000円、OAの月額管理費:5,000〜15,000円(ソレンシア注射含む場合約10,000円/月)、骨肉腫の断脚:200,000〜400,000円です。実際の費用は症状の重症度や治療内容によって異なります。