猫の腫れ
体の一部が腫れる症状です。外傷、感染、腫瘍など、さまざまな原因が考えられます。
腫れの要点まとめ
- 主な原因
- 外傷・打撲、膿瘍(感染による膿の蓄積)、アレルギー反応、腫瘍 など
- 緊急受診
- 熱を持つ腫れ・全身症状
- 自宅対応
- 腫れの大きさと経過を記録する。患部を清潔に保つ
- 治療費目安
- 膿瘍の治療:10,000〜30,000円。関節炎の管理:月5,000〜15,000円。腫瘍の外科切除:中央値73,480〜87,433円。骨肉腫の断脚:200,000〜400,000円
病態生理
腫脹は組織内への液体成分の貯留、細胞浸潤、または異常な組織増殖により局所の容積が増大した状態である。炎症性腫脹では、組織損傷や感染により放出されるヒスタミン、プロスタグランジン、ブラジキニンなどの炎症メディエーターが血管透過性を亢進させ、血漿成分が間質に漏出することで浮腫が形成される。感染性腫脹(膿瘍)では好中球の集積と細菌の増殖により膿が貯留し、被膜に包まれた腫瘤を形成する。関節腫脹は滑膜炎による関節液の過剰産生や、関節包の肥厚・線維化により生じる。腫瘍性腫脹は異常な細胞増殖による組織の塊状増大であり、良性・悪性により成長速度と浸潤性が異なる。リンパ浮腫はリンパ管の閉塞や損傷によるリンパ液のうっ滞で、全身性浮腫は心不全・腎不全・肝不全によるアルブミン低下や静脈圧上昇が原因となる。
考えられる原因
- 外傷・打撲
- 膿瘍(感染による膿の蓄積)
- アレルギー反応
- 腫瘍
- リンパ節の腫れ
- 関節炎
鑑別診断
猫同士の喧嘩による咬傷が原因。受傷後2〜5日で局所の腫脹・発熱・疼痛・跛行。膿瘍が成熟すると波動を触知。自壊後に悪臭のある排膿。Pasteurella属が主な起因菌
転落や衝突による軟部組織の損傷。受傷直後からの腫脹と疼痛。血腫は波動性の腫瘤で穿刺により血液を確認。通常は時間経過とともに自然吸収
慢性経過で徐々に関節が腫大。関節周囲の線維化と骨棘形成による硬い腫脹。疼痛は軽度〜中等度。X線で関節変性所見
スコティッシュフォールド特有。足根関節・手根関節・中手骨/中足骨の著明な腫大と硬化。四肢末端がゴツゴツと太くなる。尻尾も短く硬くなる。X線で特徴的な骨軟骨形成異常
足底パッドのびまん性腫脹と軟化。パッドが紫色に変色し、潰瘍化することがある。免疫介在性疾患で、複数のパッドが同時に侵される。FIV陽性猫での報告が多い
皮下組織のびまん性細菌感染。膿瘍と異なり明確な被膜を形成しない。患部のびまん性腫脹、発赤、熱感、疼痛。全身的な発熱を伴うことが多い
複数の関節が対称性に腫脹。発熱・嗜眠・食欲不振。関節液は非感染性の好中球増多。基礎疾患として感染症や腫瘍を検索する必要あり
緩徐に増大する硬い無痛性の腫瘤。注射部位肉腫はワクチン接種部位に発生。局所浸潤性が強く再発率が高い。切除生検で確定診断。発生率は1,000〜10,000頭に1頭
骨原発の悪性腫瘍。患部の硬い腫脹と進行性の跛行。X線で骨溶解と骨新生の混在像。猫では犬に比べ転移率が低く、後肢に好発
急性の局所腫脹で顔面や四肢に多い。疼痛、発赤を伴う。蛇咬傷では牙の刺入痕と組織壊死。蜂刺傷では急性アレルギー反応の可能性
リンパ管の閉塞や損傷によるリンパ液のうっ滞。四肢の非炎症性浮腫で圧痕を残す。腫瘍によるリンパ管圧迫が原因となることが多い。先天性リンパ浮腫は非常にまれ
免疫介在性の皮膚疾患。口唇、口腔内、四肢の皮膚に好酸球性肉芽腫を形成。アレルギーが関与していることが多い。局所の腫脹・結節として認識される
心不全では静脈圧上昇、腎不全や肝不全ではアルブミン低下により四肢や腹部に浮腫。四肢すべてにびまん性の浮腫が出現。基礎疾患の治療が必要
緊急度の目安
| 状況 | 緊急度 |
|---|---|
| 軽い腫れで元気 | 早めに受診 |
| 急速に腫れが大きくなる | 早めに受診 |
| 熱を持つ腫れ・全身症状 | 緊急受診 |
診断の進め方
腫脹の部位、大きさ、硬さ、温度、疼痛の有無、波動性を評価。関節腫脹か軟部組織腫脹かを鑑別。リンパ節の触診で局所リンパ節腫大の有無を確認。体温測定で感染性の可能性を評価
骨・関節の異常(骨折、骨腫瘍、関節変性、骨軟骨異形成症)を評価。軟部組織の腫脹範囲も確認可能。胸部X線で心臓サイズや肺転移の有無を評価
CBC(白血球増多は感染の示唆)、生化学(アルブミン、BUN/Cre、肝酵素)、FeLV/FIV検査。尿検査で蛋白尿(腎疾患)を評価。全身性疾患の除外に不可欠
腫瘤や膿瘍からの穿刺吸引で細胞診を実施。腫瘍の種類(肉腫、リンパ腫、肥満細胞腫)の予備診断。膿瘍の場合は排膿と細菌培養
軟部組織の内部構造の詳細評価。腹腔内腫瘤や心機能の評価にも使用。腫瘍が疑われる場合は切除生検または切開生検で病理組織診断を行い確定診断
自宅での対応
- 腫れの大きさと経過を記録する
- 患部を清潔に保つ
- 冷やす場合はタオルで包んだ保冷剤を短時間当てる
治療法
感染症の治療(抗菌療法・排膿)
咬傷膿瘍に対しては外科的排膿と洗浄を行い、広域抗菌薬を投与。蜂窩織炎にも抗菌薬の全身投与。感染性関節炎には長期間の抗菌薬投与と関節洗浄が必要
膿瘍は排膿と抗菌薬で通常1〜2週間で治癒。感染性関節炎は早期治療で予後良好だが遅延すると関節破壊の可能性
抗炎症・免疫抑制療法
免疫介在性関節炎にはプレドニゾロンを漸減投与。形質細胞性足底皮膚炎にはドキシサイクリンが第一選択。好酸球性肉芽腫にはステロイドまたはシクロスポリン。アレルギーの関与がある場合はアレルゲン除去も重要
免疫介在性疾患はステロイド反応性だが再発リスクあり。形質細胞性足底皮膚炎はドキシサイクリンで50〜60%が寛解
腫瘍の外科的治療
軟部組織肉腫は広範囲切除(マージン3〜5cm)が推奨。注射部位肉腫は特に侵襲性が強く根治的切除が必要。骨肉腫は断脚が第一選択。切除不能例には放射線療法を検討
軟部組織肉腫は広範囲切除で良好な局所制御。骨肉腫は断脚後の中央生存期間2〜4年。注射部位肉腫は再発率が高い
基礎疾患の治療・支持療法
心不全にはフロセミドやACE阻害薬。腎不全には輸液療法とリン制限食。低アルブミン血症にはアルブミン補充や原因治療。全身性浮腫は原疾患の改善が不可欠
基礎疾患の重症度により異なる。早期発見と適切な管理が予後を改善
疫学データ
四肢の腫脹の最も一般的な原因は外傷と咬傷膿瘍。関節腫脹は変形性関節症が最多。腫瘍性腫脹は中高齢猫で増加。注射部位肉腫の発生率は1,000〜10,000頭に1頭
外傷性は全年齢、関節変性性は中高齢、腫瘍性は8歳以上に好発
スコティッシュフォールド(骨軟骨異形成症)、メインクーン(関節疾患・心疾患)、品種を問わない(外傷・膿瘍)
膿瘍の治療:10,000〜30,000円。関節炎の管理:月5,000〜15,000円。腫瘍の外科切除:中央値73,480〜87,433円。骨肉腫の断脚:200,000〜400,000円
参考文献
- Swollen Paws and Legs in Cats — PetMD
- Inflammatory joint disease in cats: Diagnostic approach and treatment — Journal of Feline Medicine and Surgery / PMC
- Scottish Fold Osteochondrodysplasia — International Cat Care
- 猫の骨軟骨異形成症候群 — アニコム損保 猫との暮らし大百科
- Bone Tumors in Cats and Dogs — American College of Veterinary Surgeons
腫れに関するよくある質問
Q. 猫が腫れを見せる原因は何ですか?
猫の腫れの主な原因には、外傷・打撲、膿瘍(感染による膿の蓄積)、アレルギー反応、腫瘍、リンパ節の腫れ、関節炎があります。
Q. 猫の腫れはいつ病院に行くべきですか?
緊急熱を持つ腫れ・全身症状
早めに軽い腫れで元気
早めに急速に腫れが大きくなる
Q. 猫の腫れの自宅での対処法は?
- 腫れの大きさと経過を記録する
- 患部を清潔に保つ
- 冷やす場合はタオルで包んだ保冷剤を短時間当てる
Q. 猫の腫れの治療費はどのくらいですか?
猫の腫れに関連する治療費の目安は膿瘍の治療:10,000〜30,000円。関節炎の管理:月5,000〜15,000円。腫瘍の外科切除:中央値73,480〜87,433円。骨肉腫の断脚:200,000〜400,000円です。実際の費用は症状の重症度や治療内容によって異なります。