猫の体が硬い・歩き方がおかしい
猫の動きがぎこちない、歩幅が小さい、起き上がりに時間がかかるなどの症状です。シニア猫の関節炎の典型的な症状です。
体が硬い・歩き方がおかしいの要点まとめ
- 主な原因
- 関節炎(変形性関節症)、筋肉の緊張、椎間板疾患、骨折後の拘縮 など
- 緊急受診
- まったく動けない・痛みで鳴く
- 自宅対応
- 低い段差のステップを用意する。暖かい寝床を用意する
- 治療費目安
- OAの月額管理費:5,000〜15,000円。ソレンシア注射:約7,000〜10,000円/月。サプリメント:2,000〜5,000円/月。免疫介在性関節炎のステロイド管理:3,000〜8,000円/月
病態生理
体のこわばりは関節・筋肉・結合組織の炎症・変性・損傷により、正常な関節可動域と筋の柔軟性が低下した状態である。変形性関節症では関節軟骨の磨耗により軟骨下骨が露出し、滑膜炎と骨棘形成が進行することで関節可動域が制限される。長時間の安静後にこわばりが顕著になるのは、滑液の粘性が安静時に増加し、運動により温まることで流動性が回復するためである。また筋筋膜性疼痛では、持続的な筋緊張と局所循環不全により筋硬直が生じる。免疫介在性多発性関節炎では、免疫複合体の関節内沈着が滑膜の炎症と線維化を引き起こし、全身的なこわばりを呈する。神経学的原因として脊髄疾患による上位運動ニューロン障害は筋緊張亢進をもたらし、こわばりとして認識される。猫は痛みを隠す行動特性から、こわばりは活動量の低下や行動変化として間接的に観察されることが多い。
考えられる原因
- 関節炎(変形性関節症)
- 筋肉の緊張
- 椎間板疾患
- 骨折後の拘縮
- 神経疾患
鑑別診断
最も一般的な原因。起床時や安静後のこわばりが特徴的で、活動とともに軽減。肘・股関節・膝関節に好発。X線で骨棘、関節腔狭小化。12歳以上の猫の約90%にOA所見の報告あり
複数の関節が対称性に腫脹・疼痛。発熱、元気消失、食欲不振を伴う。関節液分析で非感染性の好中球増多。感染性関節炎との鑑別が重要。ステロイド反応性
スコティッシュフォールド特有。四肢末端の関節腫大と硬化、短い尻尾、進行性の重度関節症。7週齢から所見が出現し年齢とともに悪化。根治療法なし
慢性腎臓病や副腎皮質機能亢進症に続発。全身性の筋力低下、頸部腹側屈曲(ventroflexion)、歩行困難。血清カリウム値低下で確認。カリウム補充で速やかに改善
多食にもかかわらず体重減少と筋萎縮。筋力低下により動作がぎこちなくなる。頻脈、多飲多尿を伴う。血清T4上昇で確認。治療により筋力回復
糖尿病による末梢神経障害。後肢の踵を床につけて歩く蹠行(plantigrade posture)が特徴的。後肢のこわばりと筋力低下。血糖コントロールにより改善の可能性あり
脊椎の椎体間に骨棘が形成される加齢性変化。通常は無症状だが、骨棘が神経根を圧迫すると疼痛とこわばりが出現。X線で椎体辺縁の骨増殖を確認
免疫介在性の筋炎。全身の筋肉の疼痛、腫脹、筋力低下。歩様のこわばりと運動不耐性。CK上昇、筋電図異常、筋生検で炎症性細胞浸潤を確認
椎間板の変性・突出による脊髄圧迫。背部痛、後肢のこわばりから不全麻痺まで。猫ではまれだが高齢猫で発生。MRIで確定診断
Clostridium tetaniの産生するテタノスパスミンによる筋硬直。開口障害(trismus)、全身の筋硬直、剣状尾。猫は犬より感受性が低いがまれに発症。外傷歴あり
緊急度の目安
| 状況 | 緊急度 |
|---|---|
| 朝だけ動きが硬い | 経過観察 |
| 常に動きがぎこちない | 早めに受診 |
| まったく動けない・痛みで鳴く | 緊急受診 |
診断の進め方
こわばりの発症時期、進行速度、安静後の増悪、活動による改善の有無を確認。行動変化(ジャンプの回避、グルーミング減少、トイレの失敗)の聴取が重要。全関節の可動域と疼痛反応を系統的に評価
関節と脊椎の画像評価。骨棘形成、関節腔狭小化、骨硬化、椎体の変形を確認。変形性関節症の評価に不可欠。複数関節の撮影が推奨される
CBC、生化学(BUN/Cre/電解質/CK)で腎臓病、電解質異常、筋障害を評価。甲状腺ホルモン(T4)、血糖値の測定で内分泌疾患のスクリーニング。FeLV/FIV検査も考慮
多発性関節炎が疑われる場合に実施。関節穿刺で滑液を採取し、細胞診・細菌培養。免疫介在性と感染性の鑑別に重要
脊髄疾患(椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍)が疑われる場合に実施。軟部組織の精密評価が可能。全身麻酔が必要
自宅での対応
- 低い段差のステップを用意する
- 暖かい寝床を用意する
- 適度な運動を促す
- 体重管理を徹底する
治療法
疼痛管理・抗炎症療法
変形性関節症に対するNSAIDs(メロキシカム)の長期低用量投与。抗NGF抗体(フルネベトマブ/ソレンシア)は月1回の皮下注射で関節痛を管理する新しい選択肢。免疫介在性関節炎にはステロイドや免疫抑制剤を使用
OAは進行性だが適切な疼痛管理により良好な生活の質を維持可能。免疫介在性関節炎はステロイド反応性だが再発あり
環境・生活改善
段差を低減するためのステップやスロープの設置、温かくクッション性のある寝床の提供、適切な体重管理(肥満の解消)。食事にオメガ3脂肪酸を含む関節サポート食を取り入れる。適度な運動で筋力と関節可動域を維持
環境改善だけでも行動の活発化と生活の質向上が期待できる
原疾患の治療
甲状腺機能亢進症にはメチマゾールまたは放射性ヨウ素治療。糖尿病性神経障害にはインスリン療法による血糖コントロール。低カリウム血症にはカリウム補充。原疾患の改善によりこわばりも軽減
原疾患の適切な治療により筋力回復が期待できる。糖尿病性神経障害は血糖管理で6〜12ヶ月かけて改善
理学療法・リハビリテーション
低出力レーザー療法、温熱療法、マッサージ、受動的関節可動域訓練。水中トレッドミルは関節への負荷を軽減しながら筋力維持が可能。鍼治療も補完療法として報告あり
薬物療法との併用で疼痛軽減と機能改善の相乗効果
疫学データ
変形性関節症が最も一般的な原因で、6歳以上の猫の61%にX線所見あり。12歳以上では90%に達する。しかし飼い主や獣医師に臨床症状が認識されているケースは少数
加齢に伴い有病率が顕著に上昇。6歳以上で急増し、14歳以上では大多数に関節変性所見が認められる
メインクーン、スコティッシュフォールド、ペルシャ、ヒマラヤン、バーミーズ
OAの月額管理費:5,000〜15,000円。ソレンシア注射:約7,000〜10,000円/月。サプリメント:2,000〜5,000円/月。免疫介在性関節炎のステロイド管理:3,000〜8,000円/月
参考文献
- Diagnosis and Management of Feline Osteoarthritis — Today's Veterinary Practice
- Joint Disorders in Cats — Merck Veterinary Manual
- Inflammatory joint disease in cats: Diagnostic approach and treatment — Journal of Feline Medicine and Surgery / PMC
- 猫の免疫介在性関節炎って、どんな病気? — アニコム損保 猫との暮らし大百科
- Feline Osteoarthritis: Overview and Pain Management Options — Veterinary Practice
体が硬い・歩き方がおかしいに関するよくある質問
Q. 猫が体が硬い・歩き方がおかしいを見せる原因は何ですか?
猫の体が硬い・歩き方がおかしいの主な原因には、関節炎(変形性関節症)、筋肉の緊張、椎間板疾患、骨折後の拘縮、神経疾患があります。
Q. 猫の体が硬い・歩き方がおかしいはいつ病院に行くべきですか?
緊急まったく動けない・痛みで鳴く
早めに常に動きがぎこちない
Q. 猫の体が硬い・歩き方がおかしいの自宅での対処法は?
- 低い段差のステップを用意する
- 暖かい寝床を用意する
- 適度な運動を促す
- 体重管理を徹底する
Q. 猫の体が硬い・歩き方がおかしいの治療費はどのくらいですか?
猫の体が硬い・歩き方がおかしいに関連する治療費の目安はOAの月額管理費:5,000〜15,000円。ソレンシア注射:約7,000〜10,000円/月。サプリメント:2,000〜5,000円/月。免疫介在性関節炎のステロイド管理:3,000〜8,000円/月です。実際の費用は症状の重症度や治療内容によって異なります。