Squinting

猫の目を細める

猫が片目または両目を細める、まばたきが増える症状です。痛みや不快感のサインであることが多いです。

獣医師監修

目を細めるの要点まとめ

主な原因
角膜の傷・異物、結膜炎、ブドウ膜炎、緑内障 など
自宅対応
目に異物がないか確認する。明るすぎる光を避ける
治療費目安
軽度(点眼治療):3,000〜10,000円、中等度(精密検査+内科治療):15,000〜40,000円、外科手術(角膜手術・眼瞼矯正):50,000〜150,000円、眼球摘出術:約180,000円

病態生理

目を細める(眼瞼痙攣・blepharospasm)は、眼輪筋の不随意的な反復性収縮により眼瞼が閉じる状態であり、眼表面・眼内の疼痛に対する防御的反射反応である。角膜・結膜には豊富な感覚神経(三叉神経眼枝)が分布しており、これらが炎症メディエーター(ブラジキニン、プロスタグランジン、サブスタンスP)や機械的刺激により活性化されると、求心性信号が三叉神経節を経て脳幹の瞬目反射中枢に伝達され、遠心性信号が顔面神経を介して眼輪筋を収縮させる。この反射弧は眼表面の保護機構として機能するが、持続的な刺激により羞明(光過敏)と慢性的な眼瞼痙攣が生じる。角膜潰瘍の疼痛は虹彩・毛様体の反射性痙攣(前部ぶどう膜炎)を誘発し、さらに強い疼痛を引き起こす悪循環が形成される。猫の眼瞼痙攣は犬と異なり、ほぼ常に何らかの眼科的病変の存在を意味するため、原因検索が不可欠である。

考えられる原因

  • 角膜の傷・異物
  • 結膜炎
  • ブドウ膜炎
  • 緑内障
  • 眼瞼内反
  • 強い光への過敏

鑑別診断

角膜潰瘍Corneal Ulcer
多い

急性の強い疼痛による眼瞼痙攣と流涙。フルオレセイン染色で角膜上皮欠損を確認。外傷(猫同士のケンカ)やFHV-1感染が主因。深部潰瘍では角膜穿孔のリスク

年齢: 全年齢好発品種: ペルシャ、ヒマラヤン、エキゾチックショートヘア
猫ヘルペスウイルス性角膜炎FHV-1 Keratitis
多い

樹枝状角膜潰瘍が病理学的特徴。慢性再発性の経過。間質性角膜炎では角膜血管新生と混濁を伴う。ストレスで再活性化し眼瞼痙攣が再燃

年齢: 全年齢(初感染は子猫)好発品種: 品種を問わない
結膜炎(感染性・アレルギー性)Conjunctivitis (Infectious / Allergic)
多い

結膜充血・腫脹・目やにに伴う軽度〜中等度の眼瞼痙攣。FHV-1、クラミジア、カリシウイルスが主な感染性原因。角膜潰瘍ほどの強い疼痛はないことが多い

年齢: 全年齢好発品種: 品種を問わない
異物混入Ocular Foreign Body
多い

突然の急性片眼性眼瞼痙攣と流涙。植物片、砂粒、被毛などが結膜嚢や角膜表面に付着。上眼瞼の裏返し(エバーション)での確認が必要。異物除去で速やかに改善

年齢: 全年齢好発品種: 品種を問わない
前部ぶどう膜炎Anterior Uveitis
多い

縮瞳、前房フレア、充血を伴う眼瞼痙攣。毛様体筋の痙縮による強い疼痛。FIP、FeLV、FIV、トキソプラズマ、外傷が原因。低眼圧

年齢: 全年齢好発品種: 品種を問わない
緑内障Glaucoma
時々

眼圧上昇による激しい疼痛と眼瞼痙攣。散瞳、角膜浮腫(白濁)、強膜充血。猫ではぶどう膜炎続発性が最多。急性発作は緊急対応が必要。視力消失のリスク

年齢: 中高齢好発品種: バーミーズ、シャム
眼瞼内反症Entropion
時々

まぶたの内反による持続的な角膜刺激と眼瞼痙攣。慢性的な流涙と目やに。先天性は若齢の短頭種、後天性は高齢猫の眼瞼弛緩や慢性眼表面疾患に続発

年齢: 先天性は若齢、後天性は高齢好発品種: ペルシャ、メインクーン、ヒマラヤン
角膜黒色壊死症(コーニアルセクエストラム)Corneal Sequestrum
時々

角膜表面の褐色〜黒色病変と慢性的な眼瞼痙攣。猫に特異的な疾患。慢性疼痛を伴う。内科治療に抵抗性で表層角膜切除術が推奨

年齢: 2〜7歳好発品種: ペルシャ、ヒマラヤン、バーミーズ、シャム
好酸球性角膜炎Eosinophilic Keratitis
時々

角膜表面の白〜ピンク色の増殖性病変と眼瞼痙攣。角膜擦過細胞診で好酸球を確認。FHV-1との関連。ステロイド点眼に反応するが再発しやすい

年齢: 4〜8歳好発品種: 品種を問わない
眼瞼炎Blepharitis
時々

まぶたの充血・腫脹・鱗屑による不快感と眼瞼痙攣。細菌、真菌、寄生虫(ニキビダニ)、アレルギー、免疫介在性が原因。掻痒感により目を擦る行動

年齢: 全年齢好発品種: ペルシャ、ヒマラヤン
逆さ睫毛(睫毛乱生・二重睫毛)Trichiasis / Distichiasis
時々

異常な方向に生えた睫毛が角膜を持続的に刺激。慢性的な流涙と軽度の眼瞼痙攣。細隙灯顕微鏡で異常睫毛を確認。角膜表面に点状のフルオレセイン染色を示す

年齢: 全年齢好発品種: ペルシャ、ヒマラヤン
乾性角結膜炎(ドライアイ)Keratoconjunctivitis Sicca (KCS)
まれ

涙液産生低下による角膜・結膜の乾燥と慢性的な眼瞼痙攣。シルマーテスト低値。粘液性分泌物。猫では犬より稀。FHV-1後の涙腺障害が原因のことがある

年齢: 中高齢好発品種: 品種を問わない
眼球内腫瘍Intraocular Neoplasia
まれ

緩徐に進行する片眼の眼瞼痙攣、充血、虹彩の色調変化。虹彩メラノーマが猫の原発性眼内腫瘍で最多。びまん性の虹彩色素沈着として初発。続発性緑内障のリスク

年齢: 高齢(10歳以上)好発品種: 品種を問わない

緊急度の目安

状況緊急度
一時的に目を細めている経過観察
数時間以上目を細めている早めに受診
目を完全に閉じている・涙・充血早めに受診

診断の進め方

1
問診・視診・神経学的眼科検査1,000〜3,000円

眼瞼痙攣の発症時期、急性/慢性、片眼/両眼、外傷歴、外出の有無、随伴症状(目やに、流涙、くしゃみ)を聴取。瞬目反射、威嚇反射、瞳孔対光反射で視機能と神経学的整合性を評価。眼瞼の形態異常、結膜充血、角膜の透明性を肉眼的に観察

2
フルオレセイン染色検査1,000〜3,000円

角膜潰瘍の検出が最重要。フルオレセイン色素を点眼しブルーライトで観察。上皮欠損部位が蛍光緑色に染色される。樹枝状パターンはFHV-1を示唆。地図状潰瘍、穿孔の有無も確認

3
細隙灯顕微鏡検査・眼圧測定3,000〜8,000円

細隙灯顕微鏡で角膜の各層(上皮、実質、内皮)、前房の深度・混濁、虹彩・水晶体の異常を精密に観察。眼圧測定で緑内障(高眼圧)とぶどう膜炎(低眼圧)を鑑別。両検査は眼瞼痙攣の原因特定に必須

4
シルマーティアテスト1,000〜2,000円

涙液産生量を定量的に測定。低値はドライアイ(乾性角結膜炎)の診断に直結。猫の正常値は14〜17mm/min。涙液不足による角膜障害が眼瞼痙攣の原因となっていないか確認

5
細胞診・培養検査・血液検査5,000〜20,000円

角膜・結膜擦過検体の細胞診で好酸球(好酸球性角膜炎)、感染微生物を確認。FHV-1のPCR検査。ぶどう膜炎の原因検索としてFeLV/FIV検査、トキソプラズマ抗体、全身血液検査を実施

自宅での対応

  • 目に異物がないか確認する
  • 明るすぎる光を避ける
  • 目を擦らせないようにする

目を細めるの記録をつけましょう

CatsMeアプリで愛猫の目を細めるパターンを記録しておくと、獣医師の診察がスムーズに進みます。

治療法

角膜潰瘍・角膜炎の治療

広域抗菌点眼薬による感染予防・治療。散瞳薬(アトロピン)による毛様体筋痙縮の緩和と疼痛コントロール。FHV-1関連には抗ウイルス点眼薬を併用。エリザベスカラーで自己損傷を防止

主な薬剤
オフロキサシン点眼液 0.3% 4-6回/日アトロピン点眼液 1% 1-2回/日イドクスウリジン点眼液 0.1%(FHV-1)ファムシクロビル 40-90mg/kg PO q8h(重症FHV-1)
予後

表層性角膜潰瘍は1〜2週間で治癒。深部潰瘍は角膜穿孔のリスクがあり緊急手術が必要な場合がある。FHV-1角膜炎は再発を繰り返す

ぶどう膜炎・緑内障の治療

ぶどう膜炎には消炎点眼薬と散瞳薬。緑内障には眼圧降下点眼薬の緊急投与。原因疾患(FIP、トキソプラズマ等)の全身治療を同時に実施

主な薬剤
プレドニゾロン酢酸エステル点眼液 1% 4-6回/日(ぶどう膜炎)アトロピン点眼液 1% 1-2回/日(ぶどう膜炎)ドルゾラミド点眼液 2% 3回/日(緑内障)チモロール点眼液 0.5% 2回/日(緑内障)
予後

ぶどう膜炎は原因治療が奏効すれば良好。緑内障は早期治療で視力保存の可能性があるが、猫の緑内障は長期的予後が難しい

外科的治療

深部角膜潰瘍・角膜穿孔に対する結膜フラップ術または角膜移植。角膜セクエストラムの表層角膜切除術。眼瞼内反症のHotz-Celsus法による矯正。重度の緑内障・眼球内腫瘍に対する眼球摘出術

主な薬剤
全身麻酔周術期抗菌薬術後消炎・鎮痛薬(メロキシカム、ブプレノルフィン)
予後

結膜フラップ術の成功率は高い。角膜セクエストラム切除後の再発率は15〜20%。眼瞼矯正術は良好な結果。眼球摘出後は疼痛から解放されQOLが改善

対症療法・疼痛管理

原因特定までの疼痛緩和として人工涙液の頻回点眼で眼表面を保護。エリザベスカラーの装着。NSAIDs系鎮痛薬の全身投与。暗室管理による羞明の軽減

主な薬剤
人工涙液(ヒアルロン酸点眼液)適宜メロキシカム 0.05mg/kg SC/PO q24hブプレノルフィン 0.01-0.02mg/kg 口腔粘膜(急性疼痛)
予後

対症療法のみでは根本解決にならないため、原因疾患の診断・治療が不可欠。早期介入により角膜損傷の進行を防止できる

疫学データ

有病率

眼瞼痙攣は猫の眼科受診の最も一般的な主訴の一つ。角膜潰瘍は猫の眼科疾患の中でも頻度が高く、FHV-1が最も重要な原因病原体。猫の約80〜90%がFHV-1の潜伏感染を持つ

年齢分布

子猫ではFHV-1初感染による角膜炎。若齢では外傷性角膜潰瘍。中年齢では角膜セクエストラムや好酸球性角膜炎。高齢ではぶどう膜炎・緑内障・眼内腫瘍

好発品種

短頭種(ペルシャ、ヒマラヤン、エキゾチック)は角膜露出が多く角膜障害のリスクが高い、バーミーズ、シャムは緑内障のリスク

治療費の目安

軽度(点眼治療):3,000〜10,000円、中等度(精密検査+内科治療):15,000〜40,000円、外科手術(角膜手術・眼瞼矯正):50,000〜150,000円、眼球摘出術:約180,000円

関連する症状

目を細めるに関するよくある質問

Q. 猫が目を細めるを見せる原因は何ですか?

猫の目を細めるの主な原因には、角膜の傷・異物、結膜炎、ブドウ膜炎、緑内障、眼瞼内反、強い光への過敏があります。

Q. 猫の目を細めるはいつ病院に行くべきですか?

早めに数時間以上目を細めている

早めに目を完全に閉じている・涙・充血

Q. 猫の目を細めるの自宅での対処法は?

  • 目に異物がないか確認する
  • 明るすぎる光を避ける
  • 目を擦らせないようにする

Q. 猫の目を細めるの治療費はどのくらいですか?

猫の目を細めるに関連する治療費の目安は軽度(点眼治療):3,000〜10,000円、中等度(精密検査+内科治療):15,000〜40,000円、外科手術(角膜手術・眼瞼矯正):50,000〜150,000円、眼球摘出術:約180,000円です。実際の費用は症状の重症度や治療内容によって異なります。

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