猫の元気がない
猫がいつもより活発でない、寝ている時間が長い、遊びに興味を示さないなどの症状です。さまざまな病気の初期症状として現れることがあります。
元気がないの要点まとめ
- 主な原因
- 感染症(猫風邪など)、貧血、腎臓病、心臓病 など
- 緊急受診
- 呼びかけに反応しない・ぐったり
- 自宅対応
- 食事と水の摂取量を確認する。体温を測る(正常: 38.0〜39.2℃)
- 治療費目安
- 初期検査費用:15,000〜30,000円。原疾患により月額治療費5,000〜50,000円(CKD管理で月5,000〜15,000円、FIP治療で総額30〜60万円)
病態生理
猫の元気消失(レサジー)は、全身性の代謝異常・炎症・疼痛・感染症などにより、中枢神経系の覚醒機構や筋骨格系の活動能力が低下した状態である。炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α、IL-6)が視床下部に作用し、発熱・食欲低下・活動量減少を含む「疾病行動(sickness behavior)」を引き起こす。慢性腎臓病では尿毒症性毒素の蓄積と代謝性アシドーシスが倦怠感を誘発し、貧血(エリスロポエチン産生低下)により組織への酸素供給が不足する。甲状腺機能亢進症の一部(無関心型甲状腺機能亢進症)では、通常の活動性亢進とは逆に嗜眠・食欲不振を呈する。心筋症では心拍出量低下により末梢組織の低灌流が生じ、活動性が著しく低下する。猫は本能的に体調不良を隠す傾向があるため、飼い主が気づいた時点では疾患がかなり進行している場合が多く、元気消失は緊急性の高い非特異的症状として重要視される。
考えられる原因
- 感染症(猫風邪など)
- 貧血
- 腎臓病
- 心臓病
- 痛み(関節炎など)
- ストレス・うつ状態
鑑別診断
多飲多尿、体重減少、食欲低下、被毛の質低下が進行性に出現。末期では嘔吐・口臭(アンモニア臭)・貧血が顕著。IRIS分類のステージ2以降で元気消失が明瞭化。BUN・クレアチニン上昇、SDMA早期マーカーとして有用
ウェットタイプでは腹水・胸水貯留による腹部膨満・呼吸困難。ドライタイプでは眼内炎・神経症状(運動失調・痙攣)。持続的発熱(抗菌薬不応性)、食欲廃絶、黄疸を伴う。高グロブリン血症(A/G比低下)が特徴的
元気消失と食欲不振が最も多い臨床症状。犬と異なり嘔吐・腹痛は必発でない。三臓器炎(膵炎+胆管肝炎+炎症性腸疾患)を併発しやすい。fPLI(猫膵特異的リパーゼ)上昇で診断。超音波検査で膵臓の腫大・低エコー所見
通常型と異なり活動性亢進ではなく嗜眠・食欲不振・体重減少を呈する。全体の約5-10%に見られる。心筋症・腎不全を併発していることが多い。血清T4値上昇で診断。触診で甲状腺腫大を確認
猫で最も多い心疾患。初期は無症状だが進行すると運動不耐性・開口呼吸・元気消失。急性後肢麻痺(動脈血栓塞栓症)で発見されることも。聴診で心雑音・ギャロップリズム。心エコーで左室壁肥厚(≧6mm)
可視粘膜蒼白、頻呼吸、頻脈、運動不耐性。ヘモプラズマ(Mycoplasma haemofelis)感染では急性溶血と黄疸。再生性貧血では網状赤血球増加。PCV低下、直接クームス試験陽性(IMHA)。血液塗抹でヘモプラズマ検出
猫で最も多い悪性腫瘍。消化器型が最多で慢性的な食欲低下・体重減少・嘔吐下痢。縦隔型では呼吸困難。腎臓型では両側腎腫大。触診でリンパ節腫大・腹腔内腫瘤。細胞診・病理組織検査で確定。FeLV陽性猫でリスク上昇
多飲多尿、多食にもかかわらず体重減少。進行すると糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)で急激な元気消失・嘔吐・脱水。高血糖・糖尿で診断。フルクトサミン値でストレス高血糖と鑑別
急性発症の嘔吐・元気消失・食欲廃絶。ユリ中毒では摂取後24-72時間で急性腎不全。アセトアミノフェン中毒ではチアノーゼ・顔面浮腫・メトヘモグロビン血症。誤食歴の聴取が最も重要
緊急度の目安
| 状況 | 緊急度 |
|---|---|
| いつもよりやや静か | 経過観察 |
| 丸一日活動しない・食欲低下 | 早めに受診 |
| 呼びかけに反応しない・ぐったり | 緊急受診 |
診断の進め方
体温・心拍数・呼吸数測定、体重変化の確認、可視粘膜の色調・CRT評価、触診(リンパ節・甲状腺・腹部臓器)、聴診(心雑音・肺音)。発症時期・経過・食欲・排泄・環境変化の聴取
CBC:貧血・白血球増減・血小板評価。生化学:BUN・Cre・SDMA(腎機能)、ALT・ALP・GGT(肝機能)、Glu(血糖)、TP・Alb・Glob(蛋白代謝)。電解質:Na・K・Cl・Ca・P。必要に応じてfPLI(膵炎マーカー)、T4(甲状腺)追加
尿比重(腎臓の濃縮能評価)、尿蛋白(UPC比)、尿沈渣(結晶・細胞・細菌)、尿糖。低比重尿(<1.035)はCKDや甲状腺機能亢進症を示唆
胸部X線:心陰影拡大(心筋症)、胸水、肺野異常。腹部X線:腎臓サイズ、腫瘤、異物。腹部超音波:腎臓・肝臓・膵臓・消化管の形態評価、腹水の確認
心臓超音波検査(HCM評価)、FeLV/FIV抗原・抗体検査、血圧測定、甲状腺ホルモン(T4)測定、コロナウイルス抗体価(FIP疑い)、細胞診・病理組織検査(腫瘤)
自宅での対応
- 食事と水の摂取量を確認する
- 体温を測る(正常: 38.0〜39.2℃)
- 快適な環境を整える
- 様子を動画で記録する
治療法
原疾患の治療
元気消失の根本原因となる疾患に対する特異的治療。CKDでは輸液療法・リン吸着剤・ACE阻害薬。甲状腺機能亢進症ではメチマゾール投与・放射性ヨウ素治療。FIPではGS-441524やモルヌピラビルによる抗ウイルス療法
原疾患により大きく異なる。CKDステージ2-3は管理により数年の生存。FIPは抗ウイルス薬で寛解率80%超。HCMは無症状期間が長いが血栓症発症後の予後は不良
支持療法(輸液・栄養管理)
脱水補正のための皮下輸液または静脈輸液。食欲不振に対する食欲増進剤(ミルタザピン)、強制給餌、経鼻食道チューブの設置。制吐剤(マロピタント)による嘔気コントロール
支持療法により全身状態の安定化が期待できるが、原疾患の治療が根本的に必要
疼痛管理
疼痛が元気消失の原因である場合、適切な鎮痛が重要。変形性関節症にはNSAIDs(メロキシカム短期使用)や抗NGF抗体(フルネベトマブ/ソレンシア)。術後や急性痛にはブプレノルフィン
疼痛原因の除去・管理により活動性の回復が見込める
疫学データ
元気消失は最も一般的な非特異的症状であり、動物病院来院理由の上位を占める。高齢猫の50%以上が何らかの慢性疾患を有し、元気消失を呈しうる
全年齢で発生するが、7歳以上の中高齢猫で基礎疾患に起因する元気消失が顕著に増加。15歳以上では年間診療費が1歳時の4.5倍
品種を問わない(基礎疾患により好発品種は異なる)
初期検査費用:15,000〜30,000円。原疾患により月額治療費5,000〜50,000円(CKD管理で月5,000〜15,000円、FIP治療で総額30〜60万円)
元気がないに関するよくある質問
Q. 猫が元気がないを見せる原因は何ですか?
猫の元気がないの主な原因には、感染症(猫風邪など)、貧血、腎臓病、心臓病、痛み(関節炎など)、ストレス・うつ状態があります。
Q. 猫の元気がないはいつ病院に行くべきですか?
緊急呼びかけに反応しない・ぐったり
早めに丸一日活動しない・食欲低下
Q. 猫の元気がないの自宅での対処法は?
- 食事と水の摂取量を確認する
- 体温を測る(正常: 38.0〜39.2℃)
- 快適な環境を整える
- 様子を動画で記録する
Q. 猫の元気がないの治療費はどのくらいですか?
猫の元気がないに関連する治療費の目安は初期検査費用:15,000〜30,000円。原疾患により月額治療費5,000〜50,000円(CKD管理で月5,000〜15,000円、FIP治療で総額30〜60万円)です。実際の費用は症状の重症度や治療内容によって異なります。