Dandruff

猫のフケ

皮膚から白い粉のようなフケが出る症状です。乾燥やストレスによる一時的なものから、皮膚疾患のサインまで様々です。

獣医師監修

フケの要点まとめ

主な原因
空気の乾燥、栄養バランスの偏り、皮膚糸状菌症、ツメダニ症 など
自宅対応
室内の湿度を適切に保つ。オメガ3脂肪酸を含むサプリメントやフードを与える
治療費目安
初診検査:3,000〜10,000円、駆虫薬:1,500〜3,000円/月、シャンプー療法:1,500〜3,000円/本、内分泌検査・治療:月額5,000〜15,000円

病態生理

猫のフケ(鱗屑)は、表皮角化細胞のターンオーバー異常により過剰な角質が肉眼的に認識できる大きさで剥離する状態である。正常な表皮は基底層から角質層まで約21〜28日で入れ替わるが、炎症・感染・アレルギー・内分泌異常により角化が亢進すると、このサイクルが短縮し大量の角質片が産生される。脂漏症には乾性脂漏症(seborrhea sicca)と脂性脂漏症(seborrhea oleosa)があり、猫では乾性脂漏症がより一般的である。乾性脂漏症では皮脂分泌低下と角質層の水分保持能低下により乾燥した白いフケが生じ、脂性脂漏症では皮脂腺の過剰分泌により脂っぽいフケと被毛のべたつきが特徴的となる。原発性脂漏症は角化の遺伝的異常に起因するが猫ではまれであり、大多数は基礎疾患に続発する二次性脂漏症である。外部寄生虫(ツメダニ等)は角質を栄養源とし、その代謝産物が炎症を惹起して更なる角化亢進を招く悪循環を形成する。

考えられる原因

  • 空気の乾燥
  • 栄養バランスの偏り
  • 皮膚糸状菌症
  • ツメダニ症
  • アレルギー
  • 肥満による毛づくろい不足

鑑別診断

ツメダニ症(歩くフケ)Cheyletiellosis (Walking Dandruff)
多い

背部に大量の大型フケが特徴。軽〜中等度の痒み。ツメダニは大型(約0.4mm)でルーペでも観察可能。「歩くフケ」の異名通りフケが動いて見えることも。人獣共通感染症で飼い主に一過性の丘疹を生じうる

年齢: 全年齢(幼猫・多頭飼育環境に多い)好発品種: 品種を問わない(長毛種で気づきやすい)
ノミ寄生・ノミアレルギーFlea Infestation / Flea Allergy
多い

腰背部を中心に粟粒性皮膚炎と鱗屑。痒みが強い。ノミ糞が混在しフケが黒っぽくなることも。ノミ駆除で改善

年齢: 全年齢好発品種: 品種を問わない
皮膚糸状菌症Dermatophytosis (Ringworm)
多い

限局性の脱毛斑に細かいフケ(鱗屑)を伴う。円形〜不整形。痒みは軽度。ウッド灯検査と真菌培養で診断。長毛種・幼猫に多い

年齢: 幼猫・免疫抑制猫好発品種: ペルシャ、ヒマラヤン
食物アレルギー・環境アレルギーFood Allergy / Atopic Dermatitis
多い

慢性的なフケ・掻痒・脱毛。粟粒性皮膚炎パターンを示すことが多い。除去食試験やアレルゲン検査で診断

年齢: 1〜4歳で初発が多い好発品種: シャム、アビシニアン
原発性脂漏症Primary Seborrhea (Idiopathic Seborrhea)
時々

遺伝的な角化異常。猫ではまれ。全身性のフケと被毛の質低下。他の原因を除外して診断。頻回のシャンプーとビタミンA/レチノイドで管理

年齢: 若齢から症状出現好発品種: ペルシャ、デボンレックス
甲状腺機能亢進症Hyperthyroidism
時々

乾燥した被毛、フケ、脱毛、被毛のもつれ。多食なのに体重減少、多飲多尿、活動性亢進が特徴。血清T4値上昇で診断。7歳以上の猫の約10%が罹患

年齢: 8歳以上好発品種: 品種を問わない(シャム・ヒマラヤンはやや少ない)
マラセチア皮膚炎Malassezia Dermatitis
時々

脂っぽいフケ、皮膚の紅斑、独特の酸っぱい臭い。常在酵母の過剰増殖。アレルギーや免疫抑制が背景にあることが多い。細胞診で出芽酵母を確認

年齢: 全年齢好発品種: デボンレックス、スフィンクス
栄養不良・必須脂肪酸欠乏Nutritional Deficiency / Essential Fatty Acid Deficiency
時々

質の低い食事による全身的な被毛の乾燥・フケ。被毛に艶がなくパサパサ。適切な栄養改善で数週間で改善

年齢: 全年齢好発品種: 品種を問わない
糖尿病Diabetes Mellitus
時々

乾燥したフケ、被毛の質低下、皮膚の菲薄化。多飲多尿、多食、体重減少。高血糖で皮膚の免疫機能低下し二次感染を併発しやすい

年齢: 中高齢猫(肥満猫にリスク高い)好発品種: バーミーズ
シラミ症Pediculosis (Felicola subrostratus)
まれ

猫の咀嚼シラミ。背部体幹のフケ・痒み・脱毛。被毛に固着した虫卵(ニット)が特徴。衰弱猫・劣悪環境で発生

年齢: 全年齢(衰弱猫に多い)好発品種: 品種を問わない
落葉状天疱瘡Pemphigus Foliaceus
まれ

顔面・耳介・爪床の厚い痂皮・鱗屑。膿疱が破裂して黄色い痂皮を形成。細胞診でアカントリティック細胞。皮膚生検で確定

年齢: 中齢以降好発品種: 品種を問わない

緊急度の目安

状況緊急度
軽度のフケのみ経過観察
フケ+かゆみ・脱毛早めに受診
広範囲のフケ+皮膚の異常早めに受診

診断の進め方

1
被毛・フケの顕微鏡検査1,500〜3,000円

フケをスライドに載せ、ツメダニ・シラミ虫卵・皮膚糸状菌胞子の有無を検索。テープ法でマラセチアの有無も評価。低コストで迅速な初期スクリーニング

2
皮膚掻爬検査2,000〜5,000円

メスで皮膚表面を掻き取り、ツメダニ・ニキビダニ・疥癬虫体を検索。浅部と深部の両方を実施することが望ましい

3
真菌培養検査(DTM培地)3,000〜6,000円

被毛・鱗屑を培養し皮膚糸状菌を同定。結果判定に2〜3週間要する。ウッド灯検査を併用し迅速スクリーニング

4
血液検査(CBC・生化学・甲状腺ホルモン・血糖値)8,000〜15,000円

甲状腺機能亢進症(T4)、糖尿病(血糖値・フルクトサミン)、全身性疾患の除外。高齢猫では特に重要

5
皮膚生検15,000〜30,000円

初期検査で原因が特定できない場合、または自己免疫疾患が疑われる場合に実施。角化パターンと炎症細胞浸潤から原発性 vs 続発性脂漏症を鑑別

自宅での対応

  • 室内の湿度を適切に保つ
  • オメガ3脂肪酸を含むサプリメントやフードを与える
  • 定期的にブラッシングする

フケの記録をつけましょう

CatsMeアプリで愛猫のフケパターンを記録しておくと、獣医師の診察がスムーズに進みます。

治療法

外部寄生虫駆除

ツメダニ・ノミ・シラミの駆除。全頭への駆虫薬投与と環境の徹底的清掃。ツメダニは環境中での生存期間が長いため環境処理が重要

主な薬剤
セラメクチン(レボリューション)フィプロニルイベルメクチン環境用殺虫スプレー
予後

駆虫により速やかに改善。環境処理の不備で再発あり。全同居動物の同時治療が必須

基礎疾患の治療

内分泌疾患(甲状腺機能亢進症)の治療、アレルギーの管理、栄養改善。基礎疾患のコントロールにより二次性脂漏症は改善する

主な薬剤
チアマゾール(甲状腺機能亢進症)インスリン(糖尿病)除去食(食物アレルギー)
予後

基礎疾患の適切な管理で皮膚症状は改善。甲状腺機能亢進症はメチマゾールで良好なコントロール可能

局所療法(シャンプー・保湿)

角質溶解性シャンプー(硫黄・サリチル酸含有)で過剰な角質を除去。保湿剤で皮膚バリア機能を補助。猫ではシャンプー頻度は週1〜2回が目安

主な薬剤
硫黄・サリチル酸シャンプー過酸化ベンゾイルシャンプー(低濃度)セラミド含有保湿剤必須脂肪酸サプリメント
予後

対症療法として有効だが、基礎疾患の治療なしでは再発。必須脂肪酸補充で被毛の質改善に4〜6週間

栄養療法

良質なタンパク質と必須脂肪酸(オメガ3・オメガ6)を十分に含む食事への変更。ビタミンA補充は原発性脂漏症に有効だが過剰摂取に注意

主な薬剤
オメガ3脂肪酸(EPA/DHA)サプリメントビタミンA(獣医師指導下)
予後

栄養改善による被毛の質向上は4〜8週間で顕在化。必須脂肪酸欠乏の場合は速やかに改善

疫学データ

有病率

猫のフケは非常に一般的な主訴で、軽度の乾燥肌から重篤な基礎疾患の徴候まで幅広い。高齢猫のフケは甲状腺機能亢進症のスクリーニングが推奨される。原発性脂漏症は猫ではまれ

年齢分布

ツメダニ症は幼猫に多い。内分泌性は8歳以上。原発性脂漏症は若齢から。栄養性は全年齢

好発品種

ペルシャ、デボンレックス、シャム、スフィンクス

治療費の目安

初診検査:3,000〜10,000円、駆虫薬:1,500〜3,000円/月、シャンプー療法:1,500〜3,000円/本、内分泌検査・治療:月額5,000〜15,000円

関連する症状

フケに関するよくある質問

Q. 猫がフケを見せる原因は何ですか?

猫のフケの主な原因には、空気の乾燥、栄養バランスの偏り、皮膚糸状菌症、ツメダニ症、アレルギー、肥満による毛づくろい不足があります。

Q. 猫のフケはいつ病院に行くべきですか?

早めにフケ+かゆみ・脱毛

早めに広範囲のフケ+皮膚の異常

Q. 猫のフケの自宅での対処法は?

  • 室内の湿度を適切に保つ
  • オメガ3脂肪酸を含むサプリメントやフードを与える
  • 定期的にブラッシングする

Q. 猫のフケの治療費はどのくらいですか?

猫のフケに関連する治療費の目安は初診検査:3,000〜10,000円、駆虫薬:1,500〜3,000円/月、シャンプー療法:1,500〜3,000円/本、内分泌検査・治療:月額5,000〜15,000円です。実際の費用は症状の重症度や治療内容によって異なります。

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