猫の耳の異常
耳を掻く、頭を振る、耳から臭いがする、耳垢が多いなどの症状です。外耳炎や耳ダニ感染が一般的な原因です。
耳の異常の要点まとめ
- 主な原因
- 耳ダニ(ミミヒゼンダニ)、外耳炎(細菌・酵母菌)、耳血腫、ポリープ など
- 自宅対応
- 耳の中をむやみに触らない。耳の状態を写真で記録する
- 治療費目安
- 軽度外耳炎(検査+点耳薬):5,000〜10,000円、中等度(洗浄+内服+点耳):10,000〜20,000円、ポリープ摘出:50,000〜150,000円、耳血腫手術(片耳):150,000〜250,000円、TECA-LBO:250,000〜400,000円
病態生理
猫の耳のトラブルは外耳・中耳・内耳のいずれかまたは複数の部位の炎症・感染・腫瘍性変化により生じる。外耳炎は最も一般的な耳疾患で、耳道の上皮が炎症性メディエーター(ヒスタミン・プロスタグランジン)により腫脹し、耳垢腺(セルミナス腺)からの分泌が亢進する。正常な猫の外耳道は自浄作用(上皮移動:epithelial migration)により耳垢を外部に排出するが、炎症による腫脹や過剰分泌でこの機能が破綻すると、温暖・湿潤な環境が形成され細菌・酵母の増殖に好適な条件が整う。耳ダニ(Otodectes cynotis)は猫の外耳炎の最も一般的な原因で、ダニの糞便と唾液に対するIgE介在型アレルギー反応が強い痒みと特徴的な黒褐色耳垢の大量産生を引き起こす。中耳炎は猫では犬と異なり外耳炎の波及よりも上気道感染や炎症性ポリープからの発症が多い。内耳炎に進展すると前庭障害(斜頸・眼振・運動失調)やホルネル症候群を呈する。
考えられる原因
- 耳ダニ(ミミヒゼンダニ)
- 外耳炎(細菌・酵母菌)
- 耳血腫
- ポリープ
- アレルギー
- 異物
鑑別診断
猫の外耳炎で最も一般的な原因。大量の黒褐色〜暗褐色のコーヒー粕様耳垢。激しい痒みで頭を振る・後肢で耳を掻く。顕微鏡でダニ虫体・虫卵確認。伝染性が高く多頭飼育で蔓延しやすい
Staphylococcus、Pseudomonas等による二次感染。黄色〜緑色の膿性耳垢、悪臭。耳道の発赤・腫脹。多くは基礎疾患(アレルギー・ポリープ)に続発。細胞診で細菌と好中球確認
Malassezia pachydermatis等の酵母過剰増殖。暗褐色〜茶色の脂っぽい耳垢。独特の甘い発酵臭。アレルギーが背景因子。細胞診で出芽酵母を確認
中耳〜咽頭に発生するピンク色の良性腫瘤。呼吸器症状(スターター、鼻汁)と片側性外耳炎。外耳道に突出してオトスコープで視認可能な場合も。牽引摘出が標準治療だが再発率30〜50%
耳介軟骨と皮膚の間に血液が貯留し、耳介が風船状に腫脹。耳の痒みによる頭振り・掻爬が原因。外耳炎や耳ダニが基礎にあることが多い。穿刺排液だけでは再発するため外科的処置が推奨
食物アレルギーやアトピーの一症状として外耳炎が発現。両側性で再発を繰り返す。耳垢は茶色〜暗褐色。全身の皮膚症状を伴うことも。除去食試験やアレルゲン管理が根本治療
猫では上気道感染や炎症性ポリープから発症することが多い(犬の外耳炎波及とは異なる)。頭の傾き、ホルネル症候群(瞳孔縮小・瞼下垂・眼球陥凹・第三眼瞼突出)、難聴。CT検査で鼓室内の液体貯留を確認
耳道内の耳垢腺由来腫瘍。青紫色〜暗色のドーム状結節。良性(腺腫)は外科切除で治癒。悪性(腺癌)は局所浸潤性で、猫では11歳以上で悪性率が上昇
紫外線曝露により白色猫の耳介先端に好発。初期は紅斑・痂皮で見過ごされやすく、進行すると耳介の潰瘍・壊死。耳介切除で良好な予後。早期発見が重要
SCCの前駆病変。白色猫の耳介先端・鼻鏡に紅斑・鱗屑・痂皮。夏季に悪化。進行するとSCCに移行するため早期の紫外線防御と経過観察が重要
Notoedres catiによる耳介辺縁からの激しい痂皮形成と痒み。顔面・頸部に急速に拡大。皮膚掻爬で多数の虫体検出
緊急度の目安
| 状況 | 緊急度 |
|---|---|
| 時々耳を掻く程度 | 経過観察 |
| 頻繁に掻く・耳垢が多い・臭い | 早めに受診 |
| 耳が腫れている・出血 | 早めに受診 |
診断の進め方
専用器具で外耳道内部を観察。耳垢の性状、耳道の腫脹・狭窄、鼓膜の状態(穿孔の有無)、ポリープや腫瘤の有無を評価。診断の第一歩
綿棒で採取した耳垢をスライドに塗抹し顕微鏡で観察。耳ダニ虫体・虫卵、マラセチア酵母、細菌(球菌・桿菌)、炎症細胞の有無を迅速に評価
慢性・難治性外耳炎、または桿菌(Pseudomonas等)が細胞診で認められた場合に実施。原因菌の同定と有効な抗菌薬の選択に必須
中耳炎・内耳炎の評価、ポリープの範囲確認、腫瘍の浸潤度評価に使用。CTは鼓室包の骨変化を詳細に描出でき、外科計画に不可欠
耳介病変の原因精査。疥癬の除外に皮膚掻爬。耳介の腫瘤性病変や難治性潰瘍は生検で病理診断(SCC等の除外)
自宅での対応
- 耳の中をむやみに触らない
- 耳の状態を写真で記録する
- 他の猫との接触を避ける(耳ダニは伝染する)
治療法
抗寄生虫療法
耳ダニに対するスポットオン駆虫薬の投与。セラメクチンまたはイベルメクチンを使用。1回投与後、2〜4週間間隔で1〜2回追加投与。全同居動物の同時治療が必須。耳道洗浄と点耳薬で併発する外耳炎も治療
適切な駆虫で治癒率は非常に高い。環境中のダニ除去と全頭治療で再発防止
耳道洗浄・点耳薬療法
外耳炎の基本治療。耳道洗浄液で耳垢を除去した後、抗菌・抗真菌・抗炎症成分を含む点耳薬を投与。マラセチア外耳炎にはクロトリマゾール/ミコナゾール含有点耳薬。細菌性にはゲンタマイシン/エンロフロキサシン含有点耳薬
軽〜中等度の外耳炎は1〜2週間の治療で改善。基礎疾患のコントロールがないと再発
外科的治療
炎症性ポリープの牽引摘出、耳血腫の外科的整復、耳介SCCに対する耳介切除(pinnectomy)、重度慢性外耳炎に対する外耳道切除(total ear canal ablation: TECA)と鼓室包骨切り術(lateral bulla osteotomy: LBO)
ポリープ摘出は治癒的だが再発率30〜50%(鼓室包骨切り術併用で低下)。耳介切除でSCCの局所制御良好。TECA-LBOは慢性感染を根治するが聴力喪失
基礎疾患の管理
アレルギー性外耳炎の根本治療。食物アレルギーには除去食試験から食事管理。アトピーにはシクロスポリン/ステロイド。再発性外耳炎では基礎疾患の同定と管理が治療成功の鍵
基礎疾患の適切な管理で外耳炎の再発頻度が大幅に減少。完全寛解は難しいが長期的なコントロールが可能
疫学データ
外耳炎は猫で最も一般的な後天性耳疾患。耳ダニは幼猫の50%以上に感染が見られるとの報告がある。猫の外耳炎は犬に比べ有病率は低いが、中耳炎への進展は犬より多い
耳ダニは幼猫に多い。ポリープは5歳未満。耳道腫瘍は中高齢猫。SCCは9〜14歳にピーク
ヒマラヤン、デボンレックス、スフィンクス、白猫(SCC関連)
軽度外耳炎(検査+点耳薬):5,000〜10,000円、中等度(洗浄+内服+点耳):10,000〜20,000円、ポリープ摘出:50,000〜150,000円、耳血腫手術(片耳):150,000〜250,000円、TECA-LBO:250,000〜400,000円
関連する症状
耳の異常に関するよくある質問
Q. 猫が耳の異常を見せる原因は何ですか?
猫の耳の異常の主な原因には、耳ダニ(ミミヒゼンダニ)、外耳炎(細菌・酵母菌)、耳血腫、ポリープ、アレルギー、異物があります。
Q. 猫の耳の異常はいつ病院に行くべきですか?
早めに頻繁に掻く・耳垢が多い・臭い
早めに耳が腫れている・出血
Q. 猫の耳の異常の自宅での対処法は?
- 耳の中をむやみに触らない
- 耳の状態を写真で記録する
- 他の猫との接触を避ける(耳ダニは伝染する)
Q. 猫の耳の異常の治療費はどのくらいですか?
猫の耳の異常に関連する治療費の目安は軽度外耳炎(検査+点耳薬):5,000〜10,000円、中等度(洗浄+内服+点耳):10,000〜20,000円、ポリープ摘出:50,000〜150,000円、耳血腫手術(片耳):150,000〜250,000円、TECA-LBO:250,000〜400,000円です。実際の費用は症状の重症度や治療内容によって異なります。