Frequent Urination

猫の頻尿

トイレに何度も行くが、少量しか出ない、またはまったく出ないことがある症状です。膀胱炎や尿路結石の典型的な症状です。

獣医師監修

頻尿の要点まとめ

主な原因
膀胱炎(特発性が最多)、尿路結石、尿路感染症、糖尿病(多尿の場合) など
緊急受診
まったく尿が出ない(特にオス猫)
自宅対応
トイレの回数と量を記録する。トイレを増やし清潔に保つ
治療費目安
膀胱炎初回治療:5,000〜15,000円、結石症(内科的管理):20,000〜50,000円、尿道閉塞(緊急処置):中央値195,620円、会陰尿道瘻術:150,000〜300,000円

病態生理

頻尿(ポラキウリア)は膀胱が十分に充満する前に排尿衝動が生じ、少量の尿を頻回に排出する状態である。正常な排尿では膀胱壁の伸展受容体が一定以上の膀胱拡張を感知し、仙髄の排尿中枢を介して排尿反射が起こる。膀胱粘膜に炎症が存在すると(特発性膀胱炎、細菌性膀胱炎)、粘膜のC線維求心性神経が過敏となり、少量の尿貯留でも疼痛・尿意を誘発する。尿路結石が膀胱壁を機械的に刺激する場合も同様のメカニズムで頻尿が生じる。また、膀胱三角部の腫瘍や尿道部分閉塞では膀胱の有効容量が減少し、頻尿となる。猫の下部尿路疾患(FLUTD)では頻尿・血尿・排尿痛・不適切排尿が主要徴候であり、10歳未満の猫では特発性膀胱炎(FIC)が全体の55〜69%を占める最多原因である。高齢猫では細菌性尿路感染症や腫瘍の割合が増加する。多飲多尿に伴う頻尿(多尿)とは尿量が正常であるにもかかわらず頻回に排尿する点で鑑別される。

考えられる原因

  • 膀胱炎(特発性が最多)
  • 尿路結石
  • 尿路感染症
  • 糖尿病(多尿の場合)
  • 腎臓病(多尿の場合)
  • ストレス

鑑別診断

特発性膀胱炎(FIC)Feline Idiopathic Cystitis (FIC)
多い

10歳未満の猫のFLUTDの55〜69%を占める最も一般的な原因。原因不明であるが、ストレス・神経内分泌系の異常・膀胱粘膜GAG層の欠損が関与。血尿・頻尿・排尿痛の三徴を呈し、尿培養は陰性、画像検査で結石なし。症状は通常5〜7日で自然軽快するが、約50%が1年以内に再発する。環境エンリッチメント(MEMO)が治療の中心

年齢: 1〜10歳に好発(平均2〜6歳)好発品種: 品種を問わない(室内飼育・肥満・ストレス環境の猫に多い)
尿路結石症(膀胱結石)Urolithiasis (Bladder Stones)
多い

FLUTD原因の約15〜25%を占める。ストルバイト結石(若齢、アルカリ尿)とシュウ酸カルシウム結石(中高齢、酸性尿)が大半。結石が膀胱粘膜を刺激し頻尿・血尿・排尿痛を引き起こす。X線検査で結石確認可能(シュウ酸カルシウムは高輝度)。ストルバイトは療法食で溶解可能だが、シュウ酸カルシウムは外科的除去が必要

年齢: ストルバイト:2〜7歳(雌に多い)、シュウ酸カルシウム:7歳以上(雄に多い)好発品種: ペルシャ、ヒマラヤン、アメリカンショートヘア、スコティッシュフォールド、ブリティッシュショートヘア
細菌性膀胱炎(尿路感染症)Bacterial Cystitis (UTI)
多い

若齢〜中年猫では稀だが、10歳以上の高齢猫ではFLUTD原因の50%以上を占める。大腸菌、エンテロコッカスが主な起因菌。糖尿病・CKD・甲状腺機能亢進症など基礎疾患に続発することが多い(UTI猫の80〜83%に併存疾患あり)。混濁尿・悪臭尿・膿尿を伴う。尿培養で確定診断。無合併症では7日間、合併症ありでは28日間の抗菌薬投与

年齢: 10歳以上の高齢猫に多い好発品種: 品種を問わない(雌猫・高齢猫・免疫抑制状態の猫に多い)
尿道閉塞Urethral Obstruction
多い

雄猫の救急疾患。尿道栓子(粘液・結晶・炎症産物の混合物)や結石による閉塞が最多。頻回のトイレ通い・排尿努力(力み)にもかかわらず尿が出ない〜ごく少量。膀胱の著明な膨満・硬化。完全閉塞24〜48時間で高カリウム血症→不整脈→致死的。緊急のカテーテル挿入が必要。再発例では会陰尿道瘻術(PU手術)を検討

年齢: 1〜10歳の雄猫好発品種: 品種を問わない(去勢雄猫に多い、ペルシャ・ヒマラヤンでやや多い)
尿道栓子Urethral Plugs
時々

膀胱炎に伴う炎症性産物(粘液、結晶、細胞片)が尿道内で凝集し閉塞を引き起こす。雄猫の狭い尿道に好発。完全閉塞前の段階では頻尿・排尿困難として認識される。特発性膀胱炎に合併することが多い。結石とは異なり軟らかい物質であるため、カテーテル挿入で比較的容易に排除可能

年齢: 1〜10歳の雄猫好発品種: 品種を問わない(去勢雄猫に多い)
膀胱腫瘍(移行上皮癌)Bladder Neoplasia (Transitional Cell Carcinoma)
まれ

猫では犬ほど一般的ではないが、高齢猫で発生。進行性の血尿・頻尿・排尿困難を呈し、抗菌薬や抗炎症薬に反応しない慢性下部尿路症状として疑う。膀胱三角部に好発し、尿管・尿道の閉塞を引き起こすことがある。超音波検査で膀胱壁の腫瘤を確認、確定診断は組織生検による

年齢: 10歳以上の高齢猫好発品種: 品種を問わない
ストレス性頻尿Stress-Related Pollakiuria
時々

環境変化(引っ越し、新しいペット・家族の追加、工事騒音)に伴い一過性に頻尿が出現。FICの軽症型・前駆症状とも考えられる。尿検査・画像検査で異常なし。ストレス因子の除去と環境エンリッチメントで改善。フェリウェイ(合成フェイシャルフェロモン)の使用が有効な場合がある

年齢: 全年齢(若齢〜中年に多い)好発品種: 品種を問わない(神経質な性格の猫に多い)
前立腺疾患Prostatic Disease
まれ

未去勢の雄猫でまれに見られる。前立腺の腫大が尿道を圧迫し頻尿や排尿困難を引き起こす。猫の前立腺疾患は犬と比較して非常にまれ。直腸検査や超音波検査で前立腺腫大を評価

年齢: 中高齢の未去勢雄猫好発品種: 品種を問わない(未去勢雄猫)

緊急度の目安

状況緊急度
トイレ回数がやや増えた経過観察
何度もトイレに行くが少量しか出ない早めに受診
まったく尿が出ない(特にオス猫)緊急受診

診断の進め方

1
尿検査(尿一般・尿沈渣)1,000〜3,000円

最も基本的な初期検査。尿比重、pH、潜血、蛋白、ブドウ糖、結晶の有無を評価。膀胱穿刺(膀胱穿刺尿)で採取することが理想的。FICでは血尿・蛋白尿を認めるが細菌・結晶は陰性。結石症では特徴的な結晶(ストルバイト、シュウ酸カルシウム)を検出

2
尿培養・感受性試験3,000〜8,000円

膀胱穿刺で無菌的に採取した尿を培養し、細菌感染の有無と起因菌の同定・薬剤感受性を評価。10歳以上の高齢猫、基礎疾患のある猫では必須。結果が出るまで3〜5日かかる

3
画像検査(X線・超音波検査)X線:4,000〜8,000円、超音波:3,000〜6,000円

X線検査で放射線不透過性結石(特にシュウ酸カルシウム)を検出。超音波検査で膀胱壁の肥厚、結石、腫瘤、膀胱容量を評価。尿道閉塞では膀胱の著明な拡張を確認。FICでは膀胱壁の軽度肥厚以外に特異的所見なし

4
血液検査(CBC・生化学)5,000〜15,000円

尿道閉塞では高カリウム血症・高窒素血症(BUN・クレアチニン上昇)の評価が必須。高齢猫では腎機能(SDMA含む)、血糖値、甲状腺ホルモンの評価で基礎疾患を除外。貧血や白血球増多の有無を確認

5
膀胱鏡検査(必要に応じて)30,000〜60,000円(麻酔費含む)

慢性・再発性の下部尿路症状で他の検査で確定診断に至らない場合に検討。膀胱粘膜の直接観察、腫瘤の生検が可能。全身麻酔が必要。雌猫では比較的容易だが、雄猫では尿道径が小さいため困難

自宅での対応

  • トイレの回数と量を記録する
  • トイレを増やし清潔に保つ
  • 水飲み場を増やす
  • ストレス要因を減らす

頻尿の記録をつけましょう

CatsMeアプリで愛猫の頻尿パターンを記録しておくと、獣医師の診察がスムーズに進みます。

治療法

環境エンリッチメント(MEMO)

特発性膀胱炎の第一選択治療。多様な環境刺激(キャットタワー、おもちゃ、隠れ場所)の提供、トイレ環境の最適化(猫の数+1個、毎日清掃、適切な猫砂)、飲水量の増加(流れる水飲み器、ウェットフード中心の食事)、ストレス源の排除を行う

主な薬剤
フェリウェイ(合成F3フェイシャルフェロモン)
予後

85%の症例で再発頻度・重症度が低下。加齢とともに改善傾向

薬物療法

細菌性膀胱炎に対する抗菌薬治療(感受性試験結果に基づく選択)、慢性再発性FICに対する三環系抗うつ薬やGAGサプリメント、疼痛管理としてのブプレノルフィンやメロキシカムの短期使用

主な薬剤
アモキシシリン・クラブラン酸エンロフロキサシンアミトリプチリンブプレノルフィンメロキシカムグリコサミノグリカンサプリメント
予後

細菌性膀胱炎は適切な抗菌薬で治癒率高い。FICの薬物療法は補助的な位置づけ

食事療法

結石症に対する療法食(ストルバイト溶解食、シュウ酸カルシウム予防食)。尿希釈のためのウェットフード移行(尿比重を1.035未満に維持)。尿のpHを適正範囲に維持する療法食の処方

主な薬剤
ヒルズ c/d マルチケアロイヤルカナン ユリナリーS/O
予後

ストルバイト結石は2〜4週間で溶解可能。シュウ酸カルシウムは食事療法で再発率を低減

外科的治療

シュウ酸カルシウム結石の膀胱切開術による除去。再発性尿道閉塞に対する会陰尿道瘻術(PU手術)。膀胱腫瘍に対する膀胱部分切除術。PU手術後の生存期間中央値は3.5年、長期QOLは93%の飼い主が良好と評価

予後

PU手術:短期死亡率5.6%、長期死亡率13.3%。術後の尿路感染リスクがやや上昇する

疫学データ

有病率

猫の下部尿路疾患(FLUTD)は全猫の約1.5〜3%に発生。動物病院来院理由の上位を占める。日本のペット保険データでは膀胱炎の年間平均診療費は約45,741円

年齢分布

10歳未満:FIC(55〜69%)、結石症(15〜25%)が主因。10歳以上:細菌性UTI・結石症・腫瘍の割合が増加

好発品種

品種を問わないが、ペルシャ、ヒマラヤン、アメリカンショートヘアで結石症がやや多い

治療費の目安

膀胱炎初回治療:5,000〜15,000円、結石症(内科的管理):20,000〜50,000円、尿道閉塞(緊急処置):中央値195,620円、会陰尿道瘻術:150,000〜300,000円

頻尿に関するよくある質問

Q. 猫が頻尿を見せる原因は何ですか?

猫の頻尿の主な原因には、膀胱炎(特発性が最多)、尿路結石、尿路感染症、糖尿病(多尿の場合)、腎臓病(多尿の場合)、ストレスがあります。

Q. 猫の頻尿はいつ病院に行くべきですか?

緊急まったく尿が出ない(特にオス猫)

早めに何度もトイレに行くが少量しか出ない

Q. 猫の頻尿の自宅での対処法は?

  • トイレの回数と量を記録する
  • トイレを増やし清潔に保つ
  • 水飲み場を増やす
  • ストレス要因を減らす

Q. 猫の頻尿の治療費はどのくらいですか?

猫の頻尿に関連する治療費の目安は膀胱炎初回治療:5,000〜15,000円、結石症(内科的管理):20,000〜50,000円、尿道閉塞(緊急処置):中央値195,620円、会陰尿道瘻術:150,000〜300,000円です。実際の費用は症状の重症度や治療内容によって異なります。

頻尿が気になりますか?

オンラインで獣医師に相談できます。写真や動画を共有して、より正確なアドバイスを受けましょう。

LINEで相談する