Hiding

猫の隠れる

猫が普段より長時間隠れて出てこない行動です。猫は不調を感じると本能的に身を隠す傾向があり、病気のサインであることがあります。

獣医師監修

隠れるの要点まとめ

主な原因
痛みや体調不良、ストレス(環境変化・来客)、恐怖、新しいペットとの不和 など
緊急受診
隠れて動かない・食べない
自宅対応
無理に引きずり出さない。隠れ場所の近くに水と食事を置く
治療費目安
初期検査費用:15,000〜35,000円。疼痛管理(ソレンシア月1回):約10,000〜15,000円/月。行動療法相談:5,000〜15,000円/回

病態生理

猫が隠れる行動(ハイディング)は、進化的に捕食者でありかつ被食者でもある猫の防衛本能に根ざしている。野生環境では体調不良の個体は捕食リスクが高まるため、安全な隠れ場所に退避して回復を待つ行動が生存戦略として選択されてきた。この本能は家猫にも強く残存しており、疼痛・疾病・恐怖・ストレスを感じた際に暗く狭い場所に身を潜める行動として発現する。病態生理学的には、ストレスや疼痛により視床下部-下垂体-副腎皮質軸(HPA軸)が活性化し、コルチゾール分泌が亢進する。急性ストレスではカテコラミン(アドレナリン・ノルアドレナリン)の放出により闘争-逃走反応が生じ、逃走行動の一環として隠れる。慢性疼痛では行動パターンが変化し、社会的引きこもり・活動量低下・隠れる頻度増加として観察される。猫は痛みを表情や声で表現しにくく、隠れる行動が唯一の疼痛指標となることも多い。

考えられる原因

  • 痛みや体調不良
  • ストレス(環境変化・来客)
  • 恐怖
  • 新しいペットとの不和
  • 病気の進行期

鑑別診断

慢性疼痛(変形性関節症)Chronic Pain (Osteoarthritis)
多い

12歳以上の猫の90%がX線上関節変化あり。高所へのジャンプ回避、階段昇降困難、グルーミング低下、寝場所の変更。触診で関節の腫脹・可動域制限。体重負荷回避による隠れ行動

年齢: 6歳以上(12歳以上で有病率90%)好発品種: スコティッシュフォールド(骨軟骨異形成症)、メインクーン、ペルシャ
猫特発性膀胱炎(FIC)Feline Idiopathic Cystitis
多い

頻尿・血尿・排尿困難・トイレ外排尿。ストレスと強い関連。膀胱痛により隠れる・元気消失。尿検査で細菌陰性。再発を繰り返す。環境エンリッチメントが治療の柱

年齢: 1〜10歳(平均4歳)好発品種: ペルシャ、品種を問わない(室内飼い・肥満猫に多い)
口腔内疾患(歯周病・吸収病巣)Oral Disease (Periodontal Disease / Tooth Resorption)
多い

食事時の痛み表現(口をくちゃくちゃ・食事を落とす)、よだれ、口臭、片側だけで噛む。歯肉の発赤・腫脹。歯の吸収病巣は3歳以上の猫の30-70%に発生。口腔痛により食事時に隠れる

年齢: 3歳以上(加齢に伴い増加)好発品種: シャム、アビシニアン、ペルシャ
恐怖・不安障害Fear and Anxiety Disorders
多い

環境変化(引っ越し・来客・新しいペット)、大きな音(雷・花火)に反応して隠れる。イカ耳・瞳孔散大・尻尾を体に巻きつけるボディランゲージ。社会化不足の猫で顕著。身体検査で異常なし

年齢: 全年齢好発品種: 品種を問わない(社会化不足の猫に多い)
悪性腫瘍(末期)Neoplasia (Terminal Stage)
時々

進行性の体重減少、食欲廃絶、活動量低下とともに隠れる行動が増加。腫瘍性疼痛や全身衰弱による。触診で腹腔内腫瘤やリンパ節腫大。悪液質の進行

年齢: 中高齢猫(10歳以上に多い)好発品種: 品種を問わない
猫伝染性腹膜炎(FIP)Feline Infectious Peritonitis
時々

持続的発熱、食欲低下、体重減少とともに隠れる行動。ウェットタイプでは腹部膨満。ドライタイプでは眼内炎・神経症状。高グロブリン血症、A/G比低下

年齢: 2歳未満・10歳以上好発品種: 純血種全般、ベンガル、アビシニアン
分離不安症Separation Anxiety
時々

飼い主不在時の過度の鳴き声・破壊行動・トイレ外排泄。帰宅時の過剰な執着。飼い主がいる時は隠れずに過度に密着。単頭飼い・早期離乳の猫に多い

年齢: 全年齢好発品種: シャム、バーミーズ、オリエンタル
上部呼吸器感染症(猫風邪)Upper Respiratory Infection (Feline Herpesvirus / Calicivirus)
多い

くしゃみ・鼻汁・結膜炎・発熱・食欲低下を伴い隠れる。嗅覚低下により食欲がさらに低下。ヘルペスウイルスでは角膜潰瘍、カリシウイルスでは口内炎が特徴的

年齢: 幼齢猫・高齢猫・免疫抑制猫好発品種: 品種を問わない(多頭飼育・シェルター猫に多い)

緊急度の目安

状況緊急度
来客時に一時的に隠れる経過観察
数日間隠れたまま・食欲低下早めに受診
隠れて動かない・食べない緊急受診

診断の進め方

1
行動評価・問診1,500〜3,000円(初診料含む)

隠れる行動の発症時期・頻度・誘因の詳細聴取。環境変化(引っ越し・家族構成・新ペット)の有無。食欲・排泄・活動量の変化。動画撮影による行動記録の確認。猫の疼痛スケール(Feline Grimace Scale)評価

2
身体検査・疼痛評価1,500〜3,000円

全身の触診(関節可動域・筋肉量・リンパ節・腹部臓器)。口腔内検査(歯周病・吸収病巣・口内炎)。体温・心拍・呼吸数測定。ボディコンディションスコア評価

3
血液検査・尿検査8,000〜18,000円

CBC・生化学検査で全身性疾患のスクリーニング。尿検査で泌尿器疾患の評価。T4測定(中高齢猫)。FeLV/FIV検査(未検査の場合)

4
画像診断7,000〜20,000円

X線検査で関節変化・骨折・腫瘤・臓器サイズ評価。超音波検査で腹部臓器の精査。必要に応じて歯科X線(歯の吸収病巣評価)

自宅での対応

  • 無理に引きずり出さない
  • 隠れ場所の近くに水と食事を置く
  • ストレス要因を特定して取り除く
  • フェロモン製品(フェリウェイなど)を使用する

隠れるの記録をつけましょう

CatsMeアプリで愛猫の隠れるパターンを記録しておくと、獣医師の診察がスムーズに進みます。

治療法

疼痛管理

慢性疼痛(変形性関節症など)に対する多面的疼痛管理。抗NGF抗体(フルネベトマブ)の月1回皮下注射が猫の慢性痛管理の第一選択として普及。ガバペンチンは不安と疼痛の両方に有効

主な薬剤
フルネベトマブ(ソレンシア)ガバペンチンメロキシカム(短期)ブプレノルフィン(急性期)
予後

適切な疼痛管理により隠れる行動の減少・活動性の回復が期待できる。OAは進行性だが症状管理で良好なQOL維持可能

環境エンリッチメント・ストレス軽減

安心できる隠れ場所の提供(高所の隠れ家・ボックス型ベッド)、フェリウェイ(合成猫フェイシャルフェロモン)拡散器の設置、垂直空間の確保、多頭飼育での資源分離(トイレ・食器・休息場所を頭数+1)

主な薬剤
フェリウェイ(F3フェイシャルフェロモン)ジルケーン(α-カソゼピン)
予後

環境改善によりストレス関連の隠れ行動は数週間で改善傾向。慢性的な恐怖症では行動療法の併用が必要

抗不安薬療法

環境改善だけでは改善しない重度の不安・恐怖に対して薬物療法を併用。フルオキセチンやクロミプラミンが第一選択。ガバペンチンは通院時の抗不安にも有用

主な薬剤
フルオキセチンクロミプラミンガバペンチントラゾドン
予後

薬物療法と環境改善の併用で70-80%の症例で改善。投薬は最低4-6週間継続後に効果判定

疫学データ

有病率

隠れる行動は猫の正常行動の一部だが、頻度増加や突発的な変化は疾患のサイン。動物病院来院猫の約25-30%が何らかの疼痛を有するとされる

年齢分布

全年齢で発生。高齢猫では慢性疼痛に起因するケースが増加、幼齢猫では恐怖・社会化不足が主因

好発品種

品種を問わない(社会化不足の猫、室内単頭飼育猫で問題化しやすい)

治療費の目安

初期検査費用:15,000〜35,000円。疼痛管理(ソレンシア月1回):約10,000〜15,000円/月。行動療法相談:5,000〜15,000円/回

隠れるに関するよくある質問

Q. 猫が隠れるを見せる原因は何ですか?

猫の隠れるの主な原因には、痛みや体調不良、ストレス(環境変化・来客)、恐怖、新しいペットとの不和、病気の進行期があります。

Q. 猫の隠れるはいつ病院に行くべきですか?

緊急隠れて動かない・食べない

早めに数日間隠れたまま・食欲低下

Q. 猫の隠れるの自宅での対処法は?

  • 無理に引きずり出さない
  • 隠れ場所の近くに水と食事を置く
  • ストレス要因を特定して取り除く
  • フェロモン製品(フェリウェイなど)を使用する

Q. 猫の隠れるの治療費はどのくらいですか?

猫の隠れるに関連する治療費の目安は初期検査費用:15,000〜35,000円。疼痛管理(ソレンシア月1回):約10,000〜15,000円/月。行動療法相談:5,000〜15,000円/回です。実際の費用は症状の重症度や治療内容によって異なります。

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