猫の過度な鳴き声
猫が普段より多く鳴く、大きな声で鳴く、特に夜間に鳴き続けるなどの症状です。シニア猫の認知機能低下や甲状腺機能亢進症のサインであることがあります。
過度な鳴き声の要点まとめ
- 主な原因
- シニア猫の認知機能低下、甲状腺機能亢進症、痛み、ストレス・不安 など
- 自宅対応
- 規則正しい食事と遊びのスケジュールを作る。夜間は安心できる環境を整える
- 治療費目安
- 初期検査(血液+T4+血圧):15,000〜25,000円。甲状腺治療:月5,000〜10,000円。CDS管理(サプリ+処方食):月5,000〜12,000円。行動薬:月3,000〜6,000円。避妊手術:20,000〜35,000円
病態生理
猫の過度の鳴き声(過剰発声)は、正常なコミュニケーション行動の質的・量的逸脱、または疾患・不快感の表現として生じる。猫の発声は喉頭の声帯振動により産生され、大脳皮質・視床下部・中脳水道周囲灰白質(PAG)が発声の制御に関与する。疾患に伴う過剰発声の病態として、甲状腺機能亢進症では甲状腺ホルモン過剰が中枢神経系の興奮性を高め、落ち着きのなさと夜間発声を引き起こす。高血圧症(多くはCKDまたは甲状腺機能亢進症に続発)では、脳血管への圧負荷が見当識障害と発声を誘発する。認知機能障害症候群(CDS)では、β-アミロイド沈着や酸化ストレスによる神経細胞変性が昼夜リズムの破綻・空間的見当識障害・不安を引き起こし、特に夜間の意味のない発声(夜鳴き)として発現する。疼痛による発声では、侵害受容信号が脊髄後角から上行し、PAGを経て発声反射を惹起する。難聴の猫は自身の発声を認知できないため、声量が増大する。発情期の発声はエストロジェンの影響で生殖行動の一環として生じる。
考えられる原因
- シニア猫の認知機能低下
- 甲状腺機能亢進症
- 痛み
- ストレス・不安
- 発情(未避妊・未去勢)
- 聴力低下
鑑別診断
中高齢猫の過剰発声の最も多い医学的原因。夜間の鳴き声増加、落ち着きのなさ、多食にもかかわらず体重減少、多飲多尿、被毛の質低下。頻脈・心雑音を聴取。触診で甲状腺腫大。血清T4上昇で確定。日本では7歳以上の10%超が罹患
DISHA症状:見当識障害(Disorientation)、社会的交流の変化(Interactions)、睡眠-覚醒サイクルの変化(Sleep)、不適切排泄(House-soiling)、活動性の変化(Activity)。夜間の無目的な発声・徘徊が特徴的。壁や空間を凝視。15歳以上の50%がCDSの兆候
CKDまたは甲状腺機能亢進症に続発することが多い。急性失明(網膜剥離)、見当識障害、夜間発声、痙攣。収縮期血圧>160mmHgで臓器障害リスク。眼底検査で網膜出血・浮腫・剥離。ドップラー法で血圧測定
急性痛では突然の叫び声(尿路閉塞・外傷・骨折)。慢性痛では持続的な不機嫌な鳴き声。排尿時の発声は下部尿路疾患を示唆。触診時の反応で疼痛部位を推定。Feline Grimace Scaleで疼痛評価
未避妊メス猫の大きく引き延ばされた鳴き声(コーリング)。転がる・体をこすりつける・尾を横にそらすロードーシス反応。春〜秋に周期的(14-21日間隔)。避妊手術で完全に消失
自身の発声が聞こえないため声量が著しく増大。呼びかけへの無反応。大きな音への反応低下。先天性難聴は白い被毛・青い眼の猫で多い(W遺伝子関連)。加齢性は内耳有毛細胞の変性。BAER(聴性脳幹反応)検査で診断
鳴く→飼い主が反応する→行動が強化される学習パターン。食事要求・遊び要求・ドア開け要求など。特定の状況で発声。身体検査・血液検査で異常なし。飼い主の反応パターンを変えることで改善
飼い主不在時に限定した過度の発声・鳴き叫び。帰宅時の過剰な密着行動。トイレ外排泄・嘔吐・食欲低下を伴うことも。防犯カメラなどで飼い主不在時の行動を確認
緊急度の目安
| 状況 | 緊急度 |
|---|---|
| 要求鳴き(ご飯・遊びなど) | 経過観察 |
| 夜間の鳴き続け・急な増加 | 早めに受診 |
| 鳴き声+他の症状(食欲低下など) | 早めに受診 |
診断の進め方
発声の種類・頻度・時間帯・状況の詳細聴取。食欲・飲水量・体重変化の確認。避妊去勢歴。環境変化の有無。動画撮影による発声パターンの分析。認知機能チェックリスト(DISHAスコアリング)
甲状腺触診、心臓聴診(頻脈・心雑音・ギャロップ)、体重測定、ボディコンディションスコア。口腔内検査。神経学的検査(視力・聴力・姿勢反応)。体温測定
CBC・生化学検査・T4測定がルーチン。BUN/Cre/SDMAで腎機能評価。血糖値(糖尿病の除外)。尿比重・尿蛋白。中高齢猫では必須の検査セット
ドップラー法またはオシロメトリック法による血圧測定。高血圧による標的臓器障害の評価。眼底検査で網膜変化(出血・浮腫・剥離)の確認。収縮期血圧160mmHg以上で治療適応
BAER検査(聴力評価)。頭部MRI(脳腫瘍・脳炎の除外)。胸部X線・心エコー(心疾患の評価)。腹部超音波(腫瘤・腎臓形態)
自宅での対応
- 規則正しい食事と遊びのスケジュールを作る
- 夜間は安心できる環境を整える
- シニア猫にはナイトライトを設置する
治療法
原疾患の治療
甲状腺機能亢進症:メチマゾール内服(開始量1.25-2.5mg BID)。高血圧:アムロジピン(0.625-1.25mg SID)。CKD:輸液療法・リン吸着剤・食事管理。発情:避妊手術
甲状腺機能亢進症の治療開始2-4週で発声減少。高血圧は降圧薬で管理可能。CKDはステージに応じた長期管理
認知機能障害の管理
食事:抗酸化物質・DHA/EPAを豊富に含む処方食。サプリメント:SAMe、CoQ10、ビタミンE。環境:夜間照明、安全な限定空間、規則的な日課。薬物:セレギリン(適応外使用)
完治は不可能だが、環境管理と栄養サポートで進行を遅延。QOLが維持できている限り良好な余生を過ごせる
行動修正・環境管理
注目要求行動に対しては鳴いている時に反応しない(消去法)。静かな時に報酬を与える。自動給餌器の活用(夜間の食事要求対策)。遊び時間の充実。環境エンリッチメントの強化
学習性発声は飼い主の一貫した対応変更で2-4週で改善開始。消去バースト(一時的な悪化)を経て改善
抗不安薬療法
分離不安や恐怖性発声に対してSSRI/TCAを使用。フルオキセチンまたはクロミプラミンが第一選択。急性不安にはガバペンチンやアルプラゾラム。夜間発声にはトラゾドンが有用な場合も
薬物療法と行動修正の併用で60-80%の改善率。投薬は最低8週間継続後に効果判定
疫学データ
過度の鳴き声は猫の行動問題で3番目に多い相談内容。高齢猫の夜鳴きは特に多く、10歳以上の猫の28%以上にCDSの兆候。甲状腺機能亢進症は8歳以上の猫で有病率10%超
発情性:6ヶ月〜(未避妊猫)。甲状腺関連:8歳以上。CDS:10歳以上。学習性:全年齢
シャム、オリエンタル、バーミーズ、ベンガル(元来発声が多い品種)
初期検査(血液+T4+血圧):15,000〜25,000円。甲状腺治療:月5,000〜10,000円。CDS管理(サプリ+処方食):月5,000〜12,000円。行動薬:月3,000〜6,000円。避妊手術:20,000〜35,000円
過度な鳴き声に関するよくある質問
Q. 猫が過度な鳴き声を見せる原因は何ですか?
猫の過度な鳴き声の主な原因には、シニア猫の認知機能低下、甲状腺機能亢進症、痛み、ストレス・不安、発情(未避妊・未去勢)、聴力低下があります。
Q. 猫の過度な鳴き声はいつ病院に行くべきですか?
早めに夜間の鳴き続け・急な増加
早めに鳴き声+他の症状(食欲低下など)
Q. 猫の過度な鳴き声の自宅での対処法は?
- 規則正しい食事と遊びのスケジュールを作る
- 夜間は安心できる環境を整える
- シニア猫にはナイトライトを設置する
Q. 猫の過度な鳴き声の治療費はどのくらいですか?
猫の過度な鳴き声に関連する治療費の目安は初期検査(血液+T4+血圧):15,000〜25,000円。甲状腺治療:月5,000〜10,000円。CDS管理(サプリ+処方食):月5,000〜12,000円。行動薬:月3,000〜6,000円。避妊手術:20,000〜35,000円です。実際の費用は症状の重症度や治療内容によって異なります。