猫の便秘
排便の回数が減ったり、硬い便しか出ない状態です。猫は通常1日1〜2回排便しますが、2日以上出ない場合は便秘の可能性があります。
便秘の要点まとめ
- 主な原因
- 水分不足、運動不足、毛球の蓄積、巨大結腸症 など
- 緊急受診
- 嘔吐を伴う・ぐったり
- 自宅対応
- 水分摂取量を増やす工夫(ウェットフード・水飲み場の増設)。適度な運動を促す
- 治療費目安
- 内科的治療で5,000〜15,000円/回、摘便処置で10,000〜30,000円、結腸亜全摘術で150,000〜350,000円
病態生理
便秘は結腸内での便の通過時間が延長し、水分が過剰に吸収されることで硬く乾燥した便が形成される状態である。正常な排便は結腸の蠕動運動、適切な水分含有量、骨盤底筋の協調運動によって維持される。便秘の病態は(1)腸管内閉塞(毛球、異物、腫瘍)、(2)腸管外閉塞(骨盤骨折後の狭窄、腫瘤による圧迫)、(3)神経筋機能障害(巨大結腸症、自律神経障害、脊髄疾患)に大別される。重度の便秘(obstipation)が持続すると結腸壁の平滑筋が不可逆的に拡張・菲薄化し、巨大結腸症(megacolon)に至る。巨大結腸症では結腸の蠕動機能が完全に喪失し、内科的管理に不応となることがある。
考えられる原因
- 水分不足
- 運動不足
- 毛球の蓄積
- 巨大結腸症
- 骨盤の異常(骨折後など)
- 腎臓病による脱水
鑑別診断
猫の便秘の最も多い原因(約62%)。結腸平滑筋の機能障害。X線で著明に拡張した結腸を確認。内科的治療に反応しなくなることが多い
CKDなど基礎疾患に伴う脱水、飲水量不足。便が硬く乾燥。水分補給で改善
過度のグルーミングで大量の毛を摂取。消化管内で毛球が形成され通過障害。長毛種に多い
交通事故などの骨盤骨折歴。変形治癒した骨盤により結腸が物理的に狭窄。X線で骨盤腔の狭小化を確認
結腸・直腸の腫瘍やポリープによる内腔狭窄。進行性に悪化する便秘、血便を伴うことがある
仙骨・尾骨の損傷や先天性奇形により排便機能障害。マンクス猫では先天性の脊髄奇形による。排尿障害を伴うことも多い
オピオイド鎮痛剤、抗ヒスタミン薬、バリウム検査後などで発症。薬歴の確認が重要
CKDや食欲不振に伴う低カリウム血症で腸管平滑筋の収縮力低下。筋力低下、頸部腹屈を伴うことがある
肛門周囲の痛みにより排便を避ける。しぶり、排便時の鳴き声。肛門周囲の腫脹・発赤
猫では非常にまれ(医原性:放射性ヨウ素治療後が多い)。代謝低下に伴う腸管蠕動低下
緊急度の目安
| 状況 | 緊急度 |
|---|---|
| 1〜2日排便がないが元気 | 経過観察 |
| 3日以上排便なし・いきむ | 早めに受診 |
| 嘔吐を伴う・ぐったり | 緊急受診 |
診断の進め方
排便頻度・便の性状・しぶりの有無・期間を聴取。食事内容、水分摂取量、外傷歴、薬剤歴を確認。腹部触診で結腸内の硬い便塊を触知。直腸指診で直腸内の便の有無・骨盤腔の狭窄・腫瘤を確認
結腸内の便貯留の程度・範囲を評価。骨盤腔の狭窄(骨盤骨折後の変形治癒)、異物の有無、結腸の拡張度を確認。巨大結腸症の診断に不可欠
CBC、血液生化学(BUN、クレアチニン、電解質特にカリウム・カルシウム、血糖値)、T4(高齢猫)。脱水の程度、電解質異常、代謝疾患の評価
腹部超音波で腸管壁の異常・腫瘤・リンパ節腫大を精査。バリウム造影検査で通過障害の部位を特定。直腸鏡検査で粘膜の状態・腫瘤を確認
自宅での対応
- 水分摂取量を増やす工夫(ウェットフード・水飲み場の増設)
- 適度な運動を促す
- 食物繊維の多いフードを試す
治療法
内科的治療(軽〜中等症)
水分補給の強化(ウェットフードへの変更、飲水量増加の工夫)。食物繊維の追加(サイリウム)。緩下剤とプロキネティクスの併用で結腸運動を促進
軽症は食事管理と緩下剤で多くが改善。再発しやすいため継続的な管理が必要
浣腸・摘便処置
便塊が硬く自力排出困難な場合、温生理食塩水による浣腸を実施。重度の便秘ではセデーション下での用手摘便が必要。脱水補正を先行して実施
一時的な便秘解消だが原因の対処がなければ再発する。リン酸ナトリウム浣腸は猫に禁忌(致死的な高リン血症を起こす)
外科的治療(結腸亜全摘術)
内科治療に不応の巨大結腸症に対して結腸亜全摘術(subtotal colectomy)を実施。拡張した結腸を切除し回腸と直腸を吻合する。術後は軟便〜下痢が一時的に継続
結腸亜全摘術の成功率は高く、約90%の猫で良好な予後。術後数週間〜数ヶ月で便の性状が安定。術後の生活の質は良好
疫学データ
猫の消化器症状として比較的多い。猫全体の約1〜3%が便秘の治療を受けるとされる
中年齢〜高齢で増加。巨大結腸症は5〜8歳に好発。骨盤骨折後の便秘は若齢でも発症
品種を問わないが中年齢の去勢オスに多い。マンクスは先天性の神経障害による便秘リスクあり
内科的治療で5,000〜15,000円/回、摘便処置で10,000〜30,000円、結腸亜全摘術で150,000〜350,000円
便秘に関するよくある質問
Q. 猫が便秘を見せる原因は何ですか?
猫の便秘の主な原因には、水分不足、運動不足、毛球の蓄積、巨大結腸症、骨盤の異常(骨折後など)、腎臓病による脱水があります。
Q. 猫の便秘はいつ病院に行くべきですか?
緊急嘔吐を伴う・ぐったり
早めに3日以上排便なし・いきむ
Q. 猫の便秘の自宅での対処法は?
- 水分摂取量を増やす工夫(ウェットフード・水飲み場の増設)
- 適度な運動を促す
- 食物繊維の多いフードを試す
Q. 猫の便秘の治療費はどのくらいですか?
猫の便秘に関連する治療費の目安は内科的治療で5,000〜15,000円/回、摘便処置で10,000〜30,000円、結腸亜全摘術で150,000〜350,000円です。実際の費用は症状の重症度や治療内容によって異なります。