猫のよだれ
猫が普段より多くよだれを垂らす症状です。リラックス時に少量のよだれが出ることは正常ですが、大量のよだれや継続的なよだれは病気のサインかもしれません。
よだれの要点まとめ
- 主な原因
- 口内炎・歯周病、口腔内の腫瘍、異物が口に刺さっている、中毒(植物・化学物質) など
- 緊急受診
- 大量のよだれ・口を開けたまま
- 自宅対応
- 口の周りを清潔に保つ。口の中に異物がないか確認する
- 治療費目安
- 歯科スケーリングで15,000〜40,000円、抜歯(複数本)で30,000〜100,000円、全顎抜歯で80,000〜200,000円、中毒の入院治療で50,000〜200,000円
病態生理
流涎(ptyalism/hypersalivation)は唾液の過剰産生または嚥下障害による唾液の口腔外への流出である。唾液分泌は自律神経系により制御され、副交感神経刺激(迷走神経・顔面神経を介した耳下腺・顎下腺・舌下腺からの漿液性唾液分泌)と交感神経刺激(粘液性唾液分泌)が関与する。真の流涎過多は唾液分泌の亢進(嘔気、口腔内刺激、中毒、神経疾患)によるもので、偽性流涎過多は正常量の唾液が嚥下できない状態(口腔内疼痛、咽頭・食道疾患、顔面神経麻痺)によるものである。猫は犬と異なり通常よだれを垂らさない動物であるため、持続的な流涎は病的状態を示す重要な臨床徴候である。
考えられる原因
- 口内炎・歯周病
- 口腔内の腫瘍
- 異物が口に刺さっている
- 中毒(植物・化学物質)
- 吐き気
- 熱中症
鑑別診断
歯石沈着、歯肉の発赤・腫脹、口臭。3歳以上の猫の約70%に何らかの歯周病が認められる。進行すると歯の動揺・脱落
口腔粘膜の広範な炎症・潰瘍。激しい痛みでフードを食べられない、よだれ、口臭。飼育猫の最大26%が罹患。免疫異常・ウイルス(FCV、FIV)との関連
歯頸部が吸収され激しい痛み。口を痛がる、片側でしか噛まない、フードを落とす。X線で歯の根部吸収を確認。成猫の20〜60%に認められる
嘔吐の前に唾液分泌が亢進。リッキング(口唇をなめる)、嚥下運動を伴う。嘔吐の原因疾患の精査が必要
ユリ科植物、ポトス、ディフェンバキアなどの観葉植物、洗剤、殺虫剤、ピレスロイド系薬剤で急性流涎。摂取後数分〜数時間で発症。嘔吐・震えを伴うことがある
口腔内の腫瘤、嚥下困難、口臭、血混じりのよだれ。扁平上皮癌は猫の口腔腫瘍で最多。下顎・舌根部に好発
骨片、針、糸、植物の棘などが口腔内に刺さる。急性発症のよだれ、口を気にする仕草、食べられない。口腔内の視診で確認
口腔内潰瘍(舌・口蓋)による疼痛で流涎。鼻汁、くしゃみ、結膜炎を伴う。子猫・未ワクチン猫に多い
尿毒症による口腔粘膜潰瘍・悪心で流涎。アンモニア臭の口臭、多飲多尿、体重減少。BUN著増
発作中・発作後の流涎。けいれん、意識消失、失禁を伴う。発作の既往歴を確認
嚥下困難・吐出(regurgitation)を伴う流涎。食後の吐出が特徴。造影検査・内視鏡で診断
日本国内では1957年以降発生なし(海外渡航歴のある動物に注意)。急性の行動変化、攻撃性、流涎、嚥下障害。致死的
緊急度の目安
| 状況 | 緊急度 |
|---|---|
| 一時的なよだれで元気 | 経過観察 |
| よだれが数時間続く・食欲低下 | 早めに受診 |
| 大量のよだれ・口を開けたまま | 緊急受診 |
診断の進め方
よだれの発症時期・性状(サラサラvs粘稠)・随伴症状を聴取。中毒物質への曝露歴を確認。口腔内の視診(歯肉・歯・舌・咽頭の炎症、潰瘍、腫瘤、異物)。全身麻酔下での詳細な口腔内検査が必要な場合が多い
歯根部の吸収病巣(FORL)、歯周病の進行度、顎骨への浸潤を評価。全身麻酔下で撮影。口腔内疾患の精査には必須
CBC、血液生化学(BUN、クレアチニン、肝酵素)、FIV/FeLV検査。口内炎の場合はウイルス感染の関与を評価。腎不全の除外
頭部・頸部X線で腫瘤の骨浸潤を評価。口腔内腫瘤が認められた場合は生検で組織診断。食道疾患疑いでは造影検査・内視鏡検査
自宅での対応
- 口の周りを清潔に保つ
- 口の中に異物がないか確認する
- 有毒植物を猫の届かない場所に移す
治療法
歯科治療(スケーリング・抜歯)
歯周病にはスケーリング(歯石除去)とポリッシング。FORL・重度歯周病には抜歯。猫の歯肉口内炎には全臼歯抜歯または全顎抜歯が最も効果的(改善率60〜90%)。全身麻酔が必要
歯周病はスケーリングと継続ケアで管理可能。歯肉口内炎は全臼歯抜歯で約60%、全顎抜歯で約90%が改善。FORL抜歯後は速やかに疼痛緩和
内科的治療(口内炎・感染症)
軽度の歯肉炎・口内炎には抗菌薬とステロイドまたは免疫抑制剤。カリシウイルス感染には対症療法と栄養サポート。腎不全には輸液・食事療法
内科治療のみでは口内炎の完全寛解は難しく、多くの場合抜歯が最終的に必要。腎不全による口腔潰瘍は原疾患の管理が鍵
中毒時の緊急対応
中毒物質の同定と除去。口腔内の洗浄、催吐(禁忌の場合あり)、活性炭投与、輸液による希釈・排泄促進。ピレスロイド中毒には筋弛緩薬
中毒の種類と摂取量に依存。早期介入で多くの場合回復。ユリ中毒は腎不全に進行するリスクが高く予後不良のことがある
疫学データ
猫の口腔内疾患は非常に多く、3歳以上の猫の約70%に歯周病が認められる。歯の吸収病巣(FORL)は成猫の20〜60%に発生
口腔内疾患は3歳以上で急増。口腔腫瘍は10歳以上の高齢猫に多い。中毒は若齢猫で多い
品種を問わず。シャム・アビシニアンはFORLのリスクがやや高い報告がある
歯科スケーリングで15,000〜40,000円、抜歯(複数本)で30,000〜100,000円、全顎抜歯で80,000〜200,000円、中毒の入院治療で50,000〜200,000円
よだれに関するよくある質問
Q. 猫がよだれを見せる原因は何ですか?
猫のよだれの主な原因には、口内炎・歯周病、口腔内の腫瘍、異物が口に刺さっている、中毒(植物・化学物質)、吐き気、熱中症があります。
Q. 猫のよだれはいつ病院に行くべきですか?
緊急大量のよだれ・口を開けたまま
早めによだれが数時間続く・食欲低下
Q. 猫のよだれの自宅での対処法は?
- 口の周りを清潔に保つ
- 口の中に異物がないか確認する
- 有毒植物を猫の届かない場所に移す
Q. 猫のよだれの治療費はどのくらいですか?
猫のよだれに関連する治療費の目安は歯科スケーリングで15,000〜40,000円、抜歯(複数本)で30,000〜100,000円、全顎抜歯で80,000〜200,000円、中毒の入院治療で50,000〜200,000円です。実際の費用は症状の重症度や治療内容によって異なります。