猫の体重減少
食事量が変わらないのに体重が減る、あるいは食欲も落ちて体重が減少する症状です。急激な体重変化は病気のサインである可能性があります。
体重減少の要点まとめ
- 主な原因
- 甲状腺機能亢進症、糖尿病、腎臓病、消化器疾患(吸収不良) など
- 緊急受診
- 急激な体重減少・他の症状あり
- 自宅対応
- 定期的に体重を測定し記録する。食事量と水の摂取量を把握する
- 治療費目安
- 初診・スクリーニング検査で10,000〜20,000円、精密検査で30,000〜80,000円、継続治療は月5,000〜30,000円(疾患による)
病態生理
体重減少はエネルギー摂取量がエネルギー消費量を下回った場合に生じる。そのメカニズムは大きく4つに分類される。(1)食欲低下・摂食障害による摂取量減少(口腔疾患、全身疾患、ストレス)、(2)消化・吸収障害による栄養利用効率の低下(IBD、EPI、寄生虫)、(3)代謝亢進によるエネルギー消費増大(甲状腺機能亢進症、腫瘍、感染症)、(4)栄養素の喪失(蛋白漏出性腸症、糖尿病性糖尿)。猫では体重の10%以上の減少が臨床的に有意とされ、1ヶ月で5%以上の減少は精査の対象となる。高齢猫では「食べているのに痩せる」パターンが甲状腺機能亢進症・糖尿病・消化管リンパ腫の典型的な初期症状である。
考えられる原因
- 甲状腺機能亢進症
- 糖尿病
- 腎臓病
- 消化器疾患(吸収不良)
- がん(腫瘍)
- 寄生虫感染
鑑別診断
多食にもかかわらず進行性の体重減少。多飲多尿、活動性亢進、嘔吐・下痢、頻脈。血清T4上昇で確定診断。甲状腺の結節を触知することがある
多飲多尿、食欲低下、嘔吐、被毛粗剛。BUN・クレアチニン・SDMA上昇、尿比重低下。IRIS分類でステージング
多飲多尿、多食、体重減少。進行するとケトアシドーシスで元気消失・嘔吐。血糖値・フルクトサミン上昇、尿糖陽性
進行性の体重減少、食欲低下、嘔吐・下痢。小細胞型(低悪性度)は緩徐に進行、大細胞型(高悪性度)は急速に悪化。超音波で腸壁肥厚、生検で確定
慢性の嘔吐・下痢に伴う体重減少。内視鏡生検で腸粘膜の炎症細胞浸潤を確認。リンパ腫との鑑別が重要
特に子猫で顕著。下痢・腹部膨満・発育不良を伴う。糞便検査で虫卵確認。屋外アクセスのある猫に多い
多食にもかかわらず体重減少。大量の軟便・脂肪便。血清fTLI低値で確定診断
間欠的な食欲不振、嘔吐、体重減少。三臓器炎(膵炎+IBD+胆管炎)の一部として発症することが多い
心肥大(HCM)による心拍出量低下で全身の消耗。呼吸促迫、運動不耐性。心エコーで診断
持続的発熱、進行性体重減少、食欲廃絶。腹水・胸水(ウェットタイプ)、肉芽腫性病変(ドライタイプ)
痛みによる摂食障害で体重減少。よだれ、口臭、食事時の痛がる仕草
黄疸、嘔吐、食欲不振。肝酵素上昇、ビリルビン上昇。超音波で肝臓の異常
緊急度の目安
| 状況 | 緊急度 |
|---|---|
| 1ヶ月で体重の5%未満の減少 | 経過観察 |
| 1ヶ月で体重の5%以上の減少 | 早めに受診 |
| 急激な体重減少・他の症状あり | 緊急受診 |
診断の進め方
体重変化の経過(急性vs慢性)、食事量の変化(多食vs食欲低下)、飲水量・排尿量、他の随伴症状を聴取。体重測定(過去のデータとの比較)、ボディコンディションスコア評価、甲状腺触診、腹部触診
CBC、血液生化学(肝酵素、BUN、クレアチニン、SDMA、血糖、電解質、総蛋白・アルブミン、グロブリン)、T4(必須)、フルクトサミン(糖尿病疑い)、尿検査(比重、糖、蛋白)
腹部超音波で臓器形態の精査(腎臓の萎縮、肝臓の異常、膵臓の変化、消化管壁肥厚、リンパ節腫大、腫瘤の有無)。胸部X線で心拡大・胸水・肺転移を確認
FIV/FeLV検査、fPLI、fTLI、コバラミン・葉酸値、心エコー、内視鏡検査+生検、細胞診(FNA)。疑わしい疾患に応じて選択
自宅での対応
- 定期的に体重を測定し記録する
- 食事量と水の摂取量を把握する
- 高カロリーで消化の良い食事を試す
体重減少が気になったら、オンラインで獣医師に相談
自宅から猫にストレスをかけずにビデオ通話で診察。写真や動画を共有して、適切なアドバイスを受けられます。
治療法
原因疾患の治療
甲状腺機能亢進症にはメチマゾールまたはヨウ素131治療、糖尿病にはインスリン療法と食事管理、CKDには食事療法・輸液・対症療法、IBD/リンパ腫にはステロイド・化学療法
甲状腺機能亢進症は治療で体重回復が期待できる。糖尿病はインスリン離脱(寛解)する猫も20〜30%。CKDは進行性だが管理可能
栄養サポート
高カロリー・高蛋白の療法食への変更。食欲刺激薬(ミルタザピン)の併用。重度の場合は経管栄養(食道チューブ・胃瘻チューブ)
栄養状態の回復は原因治療の成功と密接に関連。早期介入ほど予後良好
対症療法(悪心・疼痛管理)
悪心が食欲低下の原因となっている場合の制吐剤投与。口腔内疼痛に対する鎮痛管理。輸液による脱水補正
対症療法は原因治療への橋渡し。悪心管理で食欲回復する例も多い
疫学データ
高齢猫で特に多い主訴。12歳以上の猫の約2/3で何らかの体重減少が認められる
7歳以上で急増。主要原因は甲状腺機能亢進症(8歳以上)、CKD(7歳以上)、糖尿病(7歳以上)、腫瘍(10歳以上)
品種を問わず。バーミーズは糖尿病リスク高、ペルシャ・アビシニアンはCKDリスク高、シャムは消化管リンパ腫リスク高
初診・スクリーニング検査で10,000〜20,000円、精密検査で30,000〜80,000円、継続治療は月5,000〜30,000円(疾患による)
この症状が見られる可能性のある病気
「体重減少」が見られる場合に考えられる病気の一覧です。症状だけで判断せず、必ず獣医師にご相談ください。
猫コロナウイルスが変異して発症する致死的な疾患です。ウェットタイプ(腹水・胸水)とドライタイプ(肉芽腫)があり、若齢猫や多頭飼育環境で多く見られます。
感染症レトロウイルスの一種で、免疫抑制やリンパ腫、貧血を引き起こします。感染猫との濃厚接触(グルーミング、食器共有)で感染します。
感染症猫のエイズとも呼ばれ、免疫機能を徐々に低下させるウイルスです。主に咬傷から感染し、未去勢の雄猫に多く見られます。
感染症腎機能が徐々に低下する進行性の疾患で、高齢猫の死因として最も多いものの一つです。初期症状は目立たないため、定期検査での早期発見が重要です。
腎臓・泌尿器腎臓に多数の嚢胞(液体で満たされた袋)ができる遺伝性疾患です。ペルシャ系品種に特に多く、進行すると慢性腎臓病に移行します。
腎臓・泌尿器消化管の慢性的な炎症で、嘔吐や下痢が長期間続きます。免疫系の異常反応が原因と考えられ、食事や薬物による長期管理が必要です。
消化器猫特有の致死的な肝臓疾患で、2-3日以上の絶食により肝臓に脂肪が過剰に蓄積して発症します。肥満猫が急に食べなくなった場合は緊急事態です。
消化器甲状腺ホルモンが過剰に分泌される疾患で、高齢猫で非常に多く見られます。食欲があるのに体重が減る、落ち着きがないなどの症状が特徴的です。
内分泌インスリンの分泌不足または効果不足により血糖値が高くなる疾患です。肥満猫に多く、適切な管理で寛解を達成できることもあります。
内分泌猫で最も多い悪性腫瘍で、リンパ組織から発生するがんです。消化器型が最も多く、FeLV感染との関連も知られています。
腫瘍歯垢・歯石の蓄積により歯周組織に炎症が起きる疾患で、猫で最も多い口腔疾患です。放置すると歯の脱落や全身性の健康問題を引き起こします。
歯・口腔口腔全体に重度の炎症が起きる疾患で、通常の歯周病よりもはるかに激しい痛みを伴います。免疫系の過剰反応が原因と考えられています。
歯・口腔結腸が異常に拡張し、正常な蠕動運動ができなくなる疾患です。重度の便秘の原因となり、放置すると生命に関わります。
消化器甲状腺機能亢進症に続発する心疾患です。過剰な甲状腺ホルモンにより心筋が肥厚・拡張し、心不全につながることがあります。
心臓体重減少に関するよくある質問
Q. 猫が体重減少を見せる原因は何ですか?
猫の体重減少の主な原因には、甲状腺機能亢進症、糖尿病、腎臓病、消化器疾患(吸収不良)、がん(腫瘍)、寄生虫感染があります。
Q. 猫の体重減少はいつ病院に行くべきですか?
緊急急激な体重減少・他の症状あり
早めに1ヶ月で体重の5%以上の減少
Q. 猫の体重減少の自宅での対処法は?
- 定期的に体重を測定し記録する
- 食事量と水の摂取量を把握する
- 高カロリーで消化の良い食事を試す
Q. 猫の体重減少の治療費はどのくらいですか?
猫の体重減少に関連する治療費の目安は初診・スクリーニング検査で10,000〜20,000円、精密検査で30,000〜80,000円、継続治療は月5,000〜30,000円(疾患による)です。実際の費用は症状の重症度や治療内容によって異なります。