猫の血便
便に血が混じる症状です。鮮血(赤い血)は大腸や肛門付近のトラブル、黒っぽい便(タール便)は上部消化管の出血を示す可能性があります。
血便の要点まとめ
- 主な原因
- 寄生虫感染、大腸炎、異物による消化管損傷、ポリープ・腫瘍 など
- 緊急受診
- 出血量が多い・便が黒い、ぐったり・嘔吐も伴う
- 自宅対応
- 便のサンプルを保管する。便の色・量・回数を記録する
- 治療費目安
- 軽症で5,000〜15,000円、精密検査を含む場合20,000〜60,000円、内視鏡・手術が必要な場合50,000〜300,000円
病態生理
血便は消化管からの出血が便に混入した状態であり、出血部位によって2種類に大別される。鮮血便(hematochezia)は下部消化管(結腸・直腸・肛門)からの出血で、赤い新鮮血が便の表面に付着または混入する。黒色便・タール便(melena)は上部消化管(食道・胃・十二指腸・小腸上部)からの出血で、血液が消化液により酸化・変性してタール様の黒色便となる。出血のメカニズムは(1)粘膜のびらん・潰瘍(炎症・感染・薬剤)、(2)血管の脆弱性・破綻(腫瘍、凝固障害)、(3)機械的損傷(硬便による粘膜擦過、異物)に分類される。少量の鮮血便は比較的軽微な大腸炎で生じうるが、大量出血やタール便は生命を脅かす重篤な疾患の可能性がある。
考えられる原因
- 寄生虫感染
- 大腸炎
- 異物による消化管損傷
- ポリープ・腫瘍
- 血液凝固障害
- ストレス性の大腸炎
鑑別診断
少量の鮮血・粘液が便に付着。しぶり(テネスムス)、少量頻回の排便。ストレスや食事変更が誘因となることが多い。全身状態は良好
特に鉤虫は腸粘膜に吸着して吸血し出血を起こす。子猫で重度の貧血に至ることがある。コクシジウムは小腸粘膜を破壊し血便を起こす。糞便検査で確認
慢性の下痢に血液・粘液が混入。嘔吐・体重減少を伴う。内視鏡生検で確定診断
硬い便が直腸・肛門粘膜を擦過して出血。便の表面に少量の鮮血が付着。排便時の痛みやしぶりを伴う
特定の食材に対するアレルギー反応で腸粘膜に炎症が生じ出血。除去食試験で改善。皮膚症状を伴うこともある
未ワクチンの子猫に多い。激しい血性水様便、嘔吐、高熱、白血球著減。致死率が高い
急性の血性下痢、発熱、元気消失。糞便培養・PCRで原因菌を同定
進行性の血便、体重減少、食欲不振。腸壁の腫瘤を超音波で確認。生検で確定診断
鋭利な異物やひも状異物による腸管粘膜の損傷。急性嘔吐・腹痛・血便。X線・超音波で異物を確認
ワルファリン系殺鼠剤中毒で凝固障害。消化管出血だけでなく皮下出血、鼻出血、血尿など多部位の出血。PT/APTT延長
NSAIDs(特にイブプロフェンなど猫に禁忌の薬剤)の誤飲による胃腸潰瘍。タール便(メレナ)が特徴。嘔吐・腹痛
肛門周囲からの出血が便に付着。排便時の痛み、肛門周囲の腫脹・発赤。犬に比べ猫では少ない
緊急度の目安
| 状況 | 緊急度 |
|---|---|
| 便の表面に少量の鮮血 | 早めに受診 |
| 出血量が多い・便が黒い | 緊急受診 |
| ぐったり・嘔吐も伴う | 緊急受診 |
診断の進め方
血便の色(鮮血vs黒色タール便)、量、頻度、随伴症状(下痢、嘔吐、しぶり)を聴取。食事歴・薬剤歴・外傷歴・ワクチン歴を確認。腹部触診、直腸指診、粘膜色・CRTで貧血の有無を評価
直接塗抹法・浮遊法による寄生虫検査。糞便潜血反応。PCRパネル(ウイルス・細菌・原虫)。便中カルプロテクチン(腸管炎症マーカー)
CBC(貧血の程度・白血球異常)、生化学(肝・腎機能、蛋白質)、凝固系検査(PT、APTT:凝固障害疑い時)。FIV/FeLV検査
腹部X線で異物・ガスパターンを確認。腹部超音波で腸壁肥厚(限局性vs瀰漫性)、腫瘤、リンパ節腫大、腹水を精査
慢性・反復性の血便で原因不明の場合に実施。上部・下部消化管の粘膜観察と組織生検。IBD・腫瘍の確定診断に必須。全身麻酔が必要
自宅での対応
- 便のサンプルを保管する
- 便の色・量・回数を記録する
- 食事を消化の良いものに変える
治療法
対症療法・支持療法
軽度の大腸炎による血便には消化性の良い食事への変更、整腸剤の投与、ストレス管理。脱水補正のための輸液。重度の出血では輸血も考慮
軽度の大腸炎は数日で改善。ストレス性や食事性であれば環境改善・食事変更で再発予防可能
抗菌薬・駆虫薬・抗炎症薬治療
感染性原因に対する原因治療。寄生虫にはフェンベンダゾールやトルトラズリル。細菌性にはメトロニダゾール。IBDにはステロイド・免疫抑制剤
寄生虫性は駆虫で速やかに改善。IBDは長期管理が必要。凝固障害はビタミンK1投与で24〜48時間以内に改善
外科的治療
腫瘍切除、異物摘出、ポリープ切除が必要な場合に実施。消化管穿孔では緊急開腹手術が必要
良性ポリープは切除で治癒。悪性腫瘍は組織型・ステージに依存。異物による穿孔は早期手術で予後改善
疫学データ
猫の消化器症状として比較的多い主訴。下痢に伴う軽度の血便は一般的だが、大量出血やタール便は緊急性が高い
若齢では寄生虫感染・ウイルス感染が主因、高齢では腫瘍・IBDが増加。便秘による粘膜損傷は全年齢
品種を問わず。シャムは消化管リンパ腫のリスクがやや高い
軽症で5,000〜15,000円、精密検査を含む場合20,000〜60,000円、内視鏡・手術が必要な場合50,000〜300,000円
血便に関するよくある質問
Q. 猫が血便を見せる原因は何ですか?
猫の血便の主な原因には、寄生虫感染、大腸炎、異物による消化管損傷、ポリープ・腫瘍、血液凝固障害、ストレス性の大腸炎があります。
Q. 猫の血便はいつ病院に行くべきですか?
緊急出血量が多い・便が黒い
緊急ぐったり・嘔吐も伴う
早めに便の表面に少量の鮮血
Q. 猫の血便の自宅での対処法は?
- 便のサンプルを保管する
- 便の色・量・回数を記録する
- 食事を消化の良いものに変える
Q. 猫の血便の治療費はどのくらいですか?
猫の血便に関連する治療費の目安は軽症で5,000〜15,000円、精密検査を含む場合20,000〜60,000円、内視鏡・手術が必要な場合50,000〜300,000円です。実際の費用は症状の重症度や治療内容によって異なります。